中川昭一農水相が来伯したこと意義は大きい。お互いの国を訪問する形で年一回、定期会談をすることで合意。つまり二年に一度、大臣が来伯することになった。次にくるのは〇八年だ▼前回、小渕外相が来伯したのは移民九十周年の九八年だったので八年ぶり。農水相としては実に二十四年ぶりだ。セラード開発以来、日伯間に大きな農業界の動きがなかった。百周年という〃呪文〃の効き目はすごい▼ブラジリア筋によれば、今回の訪伯は四月中旬に突然決まったものらしい。昨年来、ロドリゲス農相と中川農水相は二回ほど顔を合わせ、そのたびに来伯の招待をしていた。大臣本人は「ぜひ行きたい」と答えていたため、この四月に「いつ頃になるか」と改めてブラジル側からお伺いをたてたら、農水省官僚は「今のところ日伯間に大臣が話し合うような懸案事項はない」と断ったらしい。そこでブラジル側は「大臣自身が行きたいといっていた。確認してくれ」と突きかえした▼官僚がおずおずと直接尋ねると「行く」と鶴の一声。慌てた官僚らが急きょ今回の訪伯日程を整えた、という話を漏れ聞いた。その官僚が随行して来伯、ブラジル側は「たいした懸案事項がないのに、わざわざ来ていただいて感謝します」との苦言で〃歓迎〃したとの逸話も▼政治家のイニシアチブがいかに大事なものかをまざまざと感じさせるエピソードだ。〇四年の小泉首相の来伯以来、音を立てて動き始めた日伯関係。時いたれば菩薩(同志)が雲に乗って集まる「菩薩雲集」という言葉があるが、今まさに、雲の風向きが変わりはじめたのかもしれない。 (深)
06/05/11