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賠償拒否の可能性を示唆=ボリビア=強硬姿勢崩さず=撤退で困るのはペトロブラス=価格調整交渉も先送り

2006年5月12日(金)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十一日】ボリビアのラダ石油相は十日、同国の資源国有化でペトロブラスから接収した施設に対し、ペトロブラスが求める賠償支払いを拒否する可能性を示唆した。ペトロブラスの撤退により困るのはペトロブラス自体であり、ボリビアではないと同相は豪語、ガス採掘事業民営化の際に外国企業が妥当な価格を支払ったか評価した後、賠償について検討するとした。ボリビアのチョケフアンカ外相は、ペトロブラスが同国で違法採掘を行ったと告発した。次回の両国首脳会談で、同件とブラジルへのガス供給について話し合うという。両国代表は、価格調整を対等の立場で理性を以って話し合うとした交渉結果を文書で発表した。
 ブラジル向けボリビア・ガスの供給を話し合う第一回交渉は、平和的解決が困難という見通しになった。交渉は意思疎通に隔たりが甚だしく、共同記者会見は中止となった。ただ価格調整と今後の対伯通商については交渉の余地を残した。
 ペトロブラスは先に、接収設備の賠償について四十五日以内の回答を要求した。ボリビア政府が応じない場合、契約書に基づきニューヨーク国際裁判所に調停を依頼するとした。しかし、回答期限に余裕を与えることで譲歩した。
 モラレス大統領が国有化令に署名したことで、事態は全て変化した。ペトロブラスは交渉の席に就く前、ボリビア政府が何の断りもなく一方的に送り込んできたボリビア石油公団の役員は、受け入れることができないと声明を発表した。
 ボリビアのチョケフアンカ外相は、同国内でガス採掘に携わる外国企業は、全て違法採掘を行っていたとした。ボリビアの法令によると、採掘権はボリビア議会の承認を得る必要がある。資源を国有化したことで、国家主権を理由に採掘権を認めないらしい。これは五百年にわたるボリビア国民の悲願だったという。
 同外相は十二日、ウイーンで開催されるEU・ラテンアメリカ会議に出席のため訪欧し、ボリビアの国家主権について説明をする。ガス国有化はベネズエラの入れ知恵で決行したのではなく、当然の権利だと主張するらしい。これまで技術援助を行った国々に感謝するというのだ。
 ボリビアにおけるチェ・ゲバラの影響は、ブラジル人の想像を越える。ラパスを歩くと、至るところでカストロ首相とチャベス大統領の肖像画に出会うのも異様だ。チャベス大統領は十九日、ラパスを訪れ、ベネズエラ銀行の開設とガスを活用した産業発展のための援助協定にサインをする。ボリビアは、ベネズエラ一色で沸いている。
 モラレス大統領は同国の法令に基づき、国境から五〇キロメートル以内に不動産を所有する外国人は、十五日以内に撤去を命じるという。同地域にはブラジル人がアクレ州とロンドニア州の隣接するバンド県だけで二千世帯いる。これらブラジル人移住者は三十年前、ボリビアへナッツやゴム採集に雇われた季節労働者で、現地に永住した小農の家族である。
 ボリビア・ガスを当てにして設備投資をした企業は、出口のない迷路へ追い込まれた思いだ。ガスの暴騰で致命的被害を受けたのは、ガラスやタイル、陶磁器業界。原油の国際価格高騰の折、石油への切り替えは不可能とみられる。