2006年5月12日(金)
【エスタード・デ・サンパウロ紙五日】サンパウロ市内で夜中、信号が赤になり停車を余儀なくされた折、強盗らしき怪しい者が近づいてきたのを見て、赤信号の中を突っ走って逃げるか? それともみすみす強盗のなすがままになるか? あなたならどうする…。どちらも生命あるいはケガの危険性を伴うが、とっさの時にどう行動を移すか、今議論の的となっている。市交通局によると夜半の違反車取締りレーダーは停止されていおり、これによる罰金の徴収はないとのことで、警察当局では信号が赤の場合、手前からスピードを落として徐行し完全停車せずに、左右を注意深く見て渡れるなら赤信号でも発進することを勧めている。
「前門の虎、後門の狼」―。サンパウロ市内で夜半に信号に差しかかる運転手の心境はまさにそのものだ。信号が赤で停車すると強盗が出現し、かといって突っ切って発車すると衝突の危険性が待ち受けている。しかも両方とも死の危険がともなう。
三日夜、サンパウロ市西部レボウサス大通りとオスカル・フレイレ街の角で二十九歳の女性実業家が赤信号を無視して横断、大型ジープと衝突して瀕死の重傷を負った。女性のコルサ車は折しも工事中のメトロ用に掘られた三〇メートルの穴の脇で止まり惨事は免れた。落ち込んでいたら即死だったに違いない。
彼女は集中治療室に収容されており事故の原因が解明されていないが、目撃者や衝突した車の運転手の話を総合すると、何者かに追われていた様に見えたことから、信号付近で強盗に遭遇し、あわてて逃げてきたものとみられている。
この事故を契機に冒頭の言葉がクローズアップされ、信号の遵守の是非が論議されている。犯罪専門家は夜半の信号は無視してでも強盗から逃れるべきだと主張している。信号無視は一九一・七四レアルの罰金と七点の減点という重罪だが、交通局では強盗多発地区では夜半の取締りレーダーを停止させているので、赤信号でも注意深く発信するよう柔献な姿勢を見せている。
今回事故があったレボウサス大通りは正確な統計はないものの、サンパウロ市内で最も強盗が多発する地区とされている。毎日通勤コースとしている五十歳の女性は、午後十時過ぎにこれまで二〇件以上の街角強盗を目撃したという。
また、ブラジル大通りとの交叉点のガソリンスタンドの従業員は強盗にやられたと走り込んでくる車は日常茶飯事だとのこと。警察当局によると日夜パトロールをしており、今年一月から三月まで四四台の盗まれた車を回収し、四十八人の強盗を逮捕し、十四丁の武器を押収した事を強調している。しかし住民はパトロール隊が少ないと不満を表明している。
市内の危険地区はこのほか、南部ではサント・アマーロ大通りとモルンビー大通りの角、都心部ではグリセリオ地区、リベルダーデ区テイシェイラ・レイテ街とエスタード大通り近辺がホームレスの溜まり場となっていることから被害が多発している。当局では信号では以下の点を注意するよう呼びかけている。
▼信号付近では周囲を注意深く見渡す。▼交叉点では信号と歩道からなるべく遠ざかる。▼とくに左側に車を寄せない。▼信号では徐行し交叉点で青になるよう心がける。▼窓ガラスを閉め、ドアはロックする。▼所持品、身の回り品を外から見えないようにする。▼夜半の一人乗りは避ける。▼強盗にあったら抵抗せずに、相手の顔や服装など見ないこと。