興味本意でブラジルのタクシー調査を始めた。調査といってもタクシーに乗る機会を見つけては、「強盗にあったことありますか?」という質問をし、経験を語ってもらうだけのものだ。
今まで五十人に聞いてきたが、「神様のおかげで、まだ襲われた経験は無い」と笑顔で答えたのは運転手歴二年の新人一人だけだった。残り四十九人の経験平均回数は三回にもなる。
ある日、サントアンドレーでタクシーを捕まえ、いつものように質問をした。六回も経験がある上、ファベイラで下ろされた経験を語ってくれたのは、推定六十歳くらいの運転手だった。
買い換えて四台目の車を運転しながら、自らの経験を「仕事の一部だ」と笑って語るそのベテラン運転手の話を聞きながら、新人運転手の安否を気遣った。 (来)
06/05/13