2006年5月17日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙八日】南米のリーダーを自負するルーラ大統領のお株を奪い、メルコスルをかき回したベネズエラのチャベス大統領は、ウイーンで開催されるEU・ラテンアメリカ会議へも南米代表として乗り込むことになりそうだ。南米がからむ会議がいつも難航するところへ、同大統領の登場である。
会議のテーマは、メルコスルとEU市場の活性化である。さらにアンデス共同体や中米、メキシコ、チリも含めた合同会議とするらしい。また米政府も招き、これまで日陰者であったラテンアメリカ諸国も先進国会議へ招こうというEUの意図があるようだ。
しかし、メルコスルとアンデス共同体の間に何ら接触はない。コロンビアとペルーは米国との共同市場に乗り気だが米議会が承認していない。ベネズエラは、アンデス共同体を米国の尖兵だと非難して脱退したばかりなので、同会議は波乱含みである。
世界では中近東とともに南米にも新たな動きがある。チャベス大統領は米州会議の開催に反対である。ブラジルとアルゼンチンは、米州自由貿易圏(FTAA)の反逆者である。マール・デル・プラッタ会議ではチャベス大統領がただ一人、米国に反旗を翻したと思われた。しかし、今度は伯亜を従えた南米の反米主義者となった。
ルーラ大統領がチャベス大統領の圧力を振り切れるかどうか世界の注目が集まっている。ボリビアのモラレス大統領に対しては、良き理解者であり続けるのか。チャベス大統領は誰にも頼まれないが、プエルト・イグアス四首脳会議ではルーラ大統領の上に君臨した。どうも南米の様子が変ではないか。
EUでは十三日から始まる会議で、チャベス大統領のでしゃばり振りを警戒している。噂によれば、同大統領は一〇〇人以上からなる例外的な使節団を引き連れて、ウイーンへ乗り込み無言の圧力を掛けるという。遠慮会釈のないむき出しの駆け引きは、関係者を驚かせると思われる。
会議の趣旨と準備のテーマは、同大統領の意図とかなり相違がある。アルゼンチンとカリブ諸国へのエネルギー供給会議では、チャベス大統領が共同声明文を強引に書き直させた。EU代表は、同大統領の傍若無人な外交手法に脅威感を持っている。同大統領は型破りばかりでなく、外交慣習として非常識なこともやりかねないからだ。
対EU伯亜折衝ではチャベス大統領が割り込んで交渉を頓挫させた。メルコスルは、ベネズエラを同盟国として迎えたことで先行きがさらに不透明になった。はっきりしていることは、ルーラ大統領がボリビアやアルゼンチンになめられたことだ。ウイーンでも同じ目で、各国から見られることになる。