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農水省が一市民に圧力?!=本紙寄稿に〃差し止め勧告〃

2006年5月17日(水)

 一市民の投稿に、農水省やサンパウロ総領事館が中止圧力?──。日伯のサッカー交流にボランティアとして十年以上貢献してきたTさん(73)が、自身の貢献を回顧した寄稿文「私のサッカーとの出会いと関わり合い」をニッケイ新聞に掲載しようとした。ところが突然、本人が差し止めを申し入れてきたので本紙が調べたところ、農水省が関係していたことが判明した。
 Tさんは元商社マン。トヨタ杯(昨年からFIFA世界クラブ選手権トヨタカップ)でブラジルが出場するときは、チームを引率して訪日してきた。
 A4判の紙三枚にわたって、トヨタ杯に関わるようになったきっかけや日韓W杯(〇二年)でブラジル代表チームに同行した思い出などについて書いた。
 特に問題になったのは写真の一部。中川農水相が今月初めに、世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉について意見交換をするために来伯した。
 公務とは別に、リベルタドーレス杯(サンパウロ対パルメイラス)を観戦。高橋さんは当日、会場の案内役などを務めた。寄稿中、同農水相のサッカー観戦については触れていない。貴賓室で撮影した写真を使用するつもりだった。
 ところが、掲載に向けて本紙で打ち込み作業を進めていた十二日、Tさん本人から「サンパウロ総領事館から差し止め勧告がありましたので、全面キャンセル破棄して下さい」とのFAXが編集部に突然届いた。
 総領事館に本紙が尋ねたところ、広報・文化担当の杉本麗名副領事は「文章の内容自体に問題はない」という。ただし、写真を撮影したのは同農水相の随行員の一人で、農水省側から写真掲載を控える旨の話があったという。
 「撮影者は農水省なので、総領事館としては何とも言えませんが」と同館の判断ではないとする。個人の時間を使用したとしても、公式日程中にサッカーを観戦すれば、「中川農水相がサッカーを見にきたとの印象を与えかねないのでは」と副領事は説明。
 来伯中の記者会見で、同農水相本人がサッカー観戦したと公言。会見には日本のマスコミも出席していたがサッカー観戦を問題視した記事や質問はなかった。にも関わらず、一市民の寄稿文に〃差し止め勧告〃とは、過剰反応かといわれても仕方なさそうだ。
 日本からの報道特派員も「小泉首相もドイツでオペラ鑑賞してますし、特に問題でしょうか」と昨年十月の例を出し、首をひねる。
 十数年にわたるTさんの日伯サッカー界への貢献は大きい。Tさんは「純粋に自分の歩んできた道を文章に綴りたかっただけ。総領事館と話し合った上で、自分が差し止めを決めた」と強調する。「総領事館に不平不満があるわけでない。ことを荒立てたくない」と何度も語った。