2006年5月20日(土)
【エスタード・デ・サンパウロ紙十九日】サンパウロ州を大混乱に陥れた一連のPCC騒動は一部で犯罪が繰り返されているものの、大局的には平静を取り戻した。しかし、各方面での人的、物質面での被害が大きく、今後の安全の保障もないことから関係者の間で物議をかもしている。
保安当局が発表した、騒動勃発の十二日から十八日午後六時までの間の犯罪白書によると、死者総数は一六一人に上った。このうち犯罪者は一〇七人で、市民とくに遺族からは無実にもかかわらず誤射で殺害されたとの告発があるも、当局ではすべてが襲撃事件に連座し、警官との射ち合いの末に死亡したものだと正当性を主張している。
殺害された警官は軍警が二十三人、市民警察が七人だった。このうち殉職したのは軍警九人、市警三人で、残りはいずれも非番で私服でいるところを襲われた。これによりPCCは常に警官をマークしていることを物語っている。
関係者の証言によると、騒動初日に殺害された非番の警官は何ら情報を得ておらず、何のために襲われたかを知らずに息を引き取ったという。このほか市民警備員三人、刑務所看守八人、無関係の市民四人、服役囚(暴動による)九人が犠牲となった。逮捕者は一二四人で、このうち五四人が銃で負傷した。押収した武器は一四六丁に上った。
PCCによる襲撃は二九三件となった。このうちバス焼き打ちが八十二件、銀行や自動預け払機が十七件、メトロ駅が一件、交通局のパトロールカーが一台、その他が一三六件だった。
これに含まれていないのが、警官らの自宅襲撃で五十六件に上り、当局は怒り心頭に発した。軍警が徹底追及を決めたのはこれも一因とされている。
保安局の元関係者は、軍警が強硬な態度で殺りくを続行すれば、PCCとの間であつれきが生じ、限りなく仁義なき戦いが続くと危惧している。軍警はやるべき事は成し遂げ、必要なだけの殺害もしたとして、軍隊などに治安を委ねて静観した方が市民の安全につながるとの慎重論も出ている。
いっぽうで被害も波及している。コンゴーニャス空港では正確な数字を把握していないが、空港のタクシーによると乗客が通常より一〇%減少しているとのこと、市内ホテル業界では予約キャンセルが相次ぎ、一〇〇〇万レアル以上の被害となっている。逆に暴挙により破壊された刑務所の修理に州政府は一億レアルの余計な出費を強いられることになる。