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軍警内に殺し屋集団復活?=騒ぎに乗じ暗躍か=射殺の容疑者9人は無実=治安当局、調査へ

2006年5月23日(火)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十二日】サンパウロ州保安局聴聞課のフナリ課長は二十一日、軍警内に新たな殺し屋集団復活の兆候があり、その防止に努める必要があると警告した。過去一週間の騒動で殺害された九人の犠牲者は、犯罪調書に記録がない無実の市民であったことが判明、治安当局想定外の殺害であることが認められた。軍警の中には制服を着用、目抜き帽を被った者が多数おり、PCC(州都第一コマンド)メンバーか殺し屋集団かの区別が困難で、遺体は誰の射殺によるか判断できなかったと治安当局はいう。レンボサンパウロ州知事は二十日、混乱の中で認識は困難だが、無関係の市民が軍警によって誤殺された可能性があると述べた。
 十二日に発生したPCC襲撃事件の中で、ドサクサに紛れた不審な暗殺行為が起きている。聴聞課は事件と無関係の市民が混乱に乗じて消されたと案じている。怨恨関係でトラブった相手をPCC騒動に紛れて暗殺する集団の暗躍に警戒している。
 現職または元警察官が、殺しの注文を受けて被害者を殺害する例は一九八〇年までみられた。その後下火になったが、過去一週間に治安当局の規定以外の弾丸で犠牲となった遺体が増えた。公務か私怨による殺害かは、やがて法医学研究所(IML)で遺体写真により判明すると思われる。
 軍警の中に紛れ込んだ殺し屋集団の最盛期は一九五〇年代とされる。七〇年に表面化し、一網打尽に摘発された。殺し屋集団は当初、銀行強盗や麻薬密売者を暗殺していた。それがいつしか、軍事政権の下請けをするようになった。
 最近は組織を持たず行動する、新しいタイプの教唆殺人が見受けられる。政府機関が関与するはずはないと思われるが、軍政時代の暗殺手口と同様だ。他に同様の手口で殺害されたのは、サンマテウスでリンチされた五人の若者や十四日に殉職した軍警ジョゼ・ソウザ氏である。軍警らしき一団がやって来て、PCCに殺害されたように犯行現場をセットした。
 軍警によるとみられる不審な殺害は、他にジャサナン区に住む運転手のフラウジーノ氏、サンマテウス区の理容師リンドマール氏。二人は同一集団に殺害された。犠牲者二人は犯罪歴がない無実の市民であった。処刑は頭部また眉間に弾丸を打ち込み、大脳を貫通している。犠牲者の手に抵抗の跡がある。
 レンボ知事は恐怖の一週間が過ぎ、けいれんが治まりホッとしたと述懐した。次は騒動の結果と被害状況をまとめる。同知事が心配するのは、市民の犠牲者数と治安当局の正当防衛についてである。事件は内戦ではなく悲劇的な社会現象であるから、犠牲者名は公表しないという。
 フナリ課長は二十三日、サウロ保安局長官と不審な殺害について話し合う。保安局長官は射殺された襲撃容疑者が一一一人に達し、彼らを射殺した警官を確認できることを認めた。死因の解明は保安局の管轄ではないが、犠牲者名の公表拒否は納得できないとした。いずれ不審死の責任者は判明するが、犯行は混乱の犠牲ではなく、周到に準備され全く証言者のいない計画的な殺人だという。