2006年5月24日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙】国連の安保理改革でブラジルの常任理事国入りの夢は消え、世界貿易機関(WTO)の専務理事選挙候補でも挫折した。ブラジルは南米の座長として外交を取り仕切り三年、空振り三振続きだ。
ボリビアのモラレス大統領はコカイン王として国際的批判を受ける中、ルーラ大統領の後押しで元首の席を得た。それが就任早々、石油ガス資源の国有化を宣言し、ペトロブラスの設備を接収した。他にEBX製鉄も追放するらしい。まるで飼い犬にかまれたようで、格好が悪い。
亜国のキルチネル大統領は、亜産業界の後押しを背景に手前勝手な貿易メカニズムを設定した。隣国ウルグアイとの間ではパルプ会社の建設で摩擦を起こし、メルコスルに分裂の危機を招いている。
チャベス大統領が発言力を強め反米思想を吹き込んだことで、ブラジルは南米の幹事役が難しくなった。南米に起きている大衆迎合主義の火付け役は、同大統領といえそうだ。お陰で米州自由貿易(FTAA)交渉は難航している。
ブラジル外交にとって特筆すべきことは、国際貿易における立場だ。中国やインドなどの途上国連合をリードしようとした伯外務省は力不足のため、地元南米でミソをつけた。
まずベネズエラへの対応で誤解を生んだ。ベネズエラで大衆の支持を得るためブラジルが協力したのはよいが、両国は非現実的なガスパイプライン大プロジェクトに夢中になったため、空想家とみられて国際間で孤立しかねない。
チャベス大統領の政治スタイルは奇抜で少数派の特徴がある。同大統領との共同前線はルーラ大統領の南米共同体構想には不利と思われる。同大統領はアンデス共同体からの脱退を宣言した直後、コロンビアとペルーがベネズエラに同調すれば脱退を撤回するとわがままなのだ。
ボリビアは、ベネズエラ・アルゼンチンのパイプラインプロジェクトに反対。メルコスル唯一のガス供給国になりたかったようだ。チャベス案に参加すれば、チャベス方式に振り回され、チャベスのペースにはまりそうだ。
メルコスルへのベネズエラ参加は、エンジンのかかりは悪かったが既成事実になった。しかし、チャベス大統領はメルコスルへ頭痛の種を次々と持ってくる。同大統領は、ブラジル農産物の対米輸出を邪魔し、制限措置を講じさせる。ベネズエラが対米関係で被った制限措置をブラジルにも適用させようとする。
米政府は歩調が揃わない南米諸国の弱味に付け込み、二カ国間協定で貿易攻勢をかけている。チリは締結済みで、コロンビアとペルーは交渉中。ウルグアイにも色目を送り、メルコスルの溝を深めた。米国の二カ国間協定はブラジルのそれより一枚上手だ。
ブラジル外交は一度に全て挑戦するのが難だ。結局二兎を追い、一兎も物にできない。アルゼンチンとウルグアイのパルプ紛争で仲裁に失敗したのも顔を下げた。この両国紛争が加熱するほど、ブラジル外交の無能が話題になる。