2006年5月24日(水)
【エザーメ誌八六六号】為替危機でブラジルの産業構造が変化している。輸出に賭けてきた加工産業は、ダーウィンの進化論を地で行く典型的例となっている。二〇〇六年に入り二カ月で輸出メーカーの六〇〇社が閉業に追い込まれた。為替事情は、国際市場からブラジルの輸出メーカーを撤退させ芽を摘んだ。
輸出メーカーのほとんどは、一ドル三レアルのレートで産業構造を設定し、二レアルは致命的である。また、往年の為替水準に戻る可能性もないとみている。これらメーカーにとって政府の財政黒字は、皮肉としか言い様がない。
〇五年の輸出はブラジルの世界ランクを大きく上げたが、加工業者には全く興味がない。輸出の花形は砂糖や鉄鉱石、原油などコモディティがズラリと顔を並べた。その上海外投資家は政府の招きで、湯水のごとくドル投資を行う。
輸出メーカーの一つ台所用具のトラモンチーナは、資材の海外調達を始めた。スチールはドイツ、プラスチックは米国。これで同社は黒字経営に転じた。車両の車体組み立てで最大手のマルコポーロは、部品の七〇%を世界各国から輸入している。
為替対策は分野によって異なる。為替危機で最も被害を受けた製靴は、人件費を外国の下請けへの委託生産で切り抜ける計画だ。製靴五大メーカーの一つ、アザレイアは中国で委託生産を始めた。海外での委託生産第一号だ。結果は同業他社が見守るところ。
国内で生産すると一足当たりの人件費は二・二四ドルだが、中国で委託生産すると六七セントになる。ブルカブラスも、中国で委託生産を始めた。靴の委託生産はアルゼンチンも選択肢にある。
パケターやピカデリー、ウエスト・コウストなどが隣国へ赴いた。靴をメキシコへ輸出すると、ブラジルでは三五%の関税を取られるのに、アルゼンチンから輸出すると五%で済む。その上為替差損もない。
米国メーカーの空洞化は激しかったが、ブラジルも企業の移動で空洞化が起きている。この現象には二つの側面がある。一方はストの頻発や不渡りの増発、閉業申請、大量解雇。他方は製造の衰退に代わり、サービス業と技術開発が台頭する。米国では、高率利益が見込める業種が残った。