2006年5月30日(火)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙二十八、二十九日】情報関連企業のKrollがブラジル政府要人の動きを内偵するためCIA(米中央情報局)の協力を求めたことで、連邦警察は二十八日、CIAの関与が事実かどうか解明すると発表した。ブラジル・テレコムがオパチュニティ銀行の支配下にあったころ、同行はKrollへ政府の動きを内偵するよう依頼した。Krollの代表ホウダー氏の報告書には、CIA南米部長がルーラ大統領や閣僚などブラジル政府要人と接触したことが記録されている。ライバルのイタリア・テレコムを擁護する政府要人の監視でCIAが動いたとみられている。
連邦警察は、Krollの政府内偵に手を貸した疑いでCIAを捜査することにした。CIAファイルの捜査は、Krollの内偵活動を記述した連警の調書によって行う。Krollの政府内偵は、オパチュニティ銀行頭取ダンタス氏の指示でブラジル・テレコムから依頼したもの。
CIA部長との会合で政府要人らは、罰せられることはないとタカをくくったKrollが政府内で横柄に振舞っていたと発言。まるで何をしてもよいと我が物顔のKrollに不満を訴えた。多国籍企業が、ブラジル国内で要人の個人的言動をチェックするのは越権行為であると警告した。
ホウダー報告によれば、CIAがブラジル政府要人を監視していた。大統領は電話通信業界内の争いに政府がタッチする意向はなく、自然の成り行きで決着をつける考えであった。前官房長官はブラジル・テレコムを擁護。前財務相は中立。法相はKrollに批判的。反ブラジル・テレコムの急先鋒は、トゥーマ上議とラセルダ連警長官であったという。同報告は上議と長官が先輩と後輩の関係にあるとしている。
CIA派遣の匿名要員は、ブラジル・テレコムの年金基金への参加を捜査する連警シャカル作戦の動きを探るために来た。CIA要員は連警や大統領執務室に潜入、幹部職員も調査対象にした。擁護派か反対派に属するかで、幹部職員を色分けした。イタリア・テレコムに肩入れする要人には、タックス・ヘイブンでの取引や身辺のチェックも行った。
二十九日に行われる党幹部と閣僚との定例会議で、ブラジル国内でのKrollによる情報収集活動が議題にされる。政府関係者の間でKrollのあつかましさが鼻についたとされる。
二〇〇五年二月のホウダー報告書によれば、CIA南米部長が閣議に出席し、ルーラ大統領と接触した。同CIA部長は接触の目的は別件であったとしたが、政府内にライバルのイタリア・テレコム擁護派が存在することを通告したという。
ホウダー氏自身も元CIA要員で同局内にコネを持ち、ダニロビッチ駐伯米大使やハリス通商部顧問と、ひんぱんに接触していた。オパチュニティ銀行がKrollを起用したのは、シティバンクの後押しによるイタリア・テレコムのブラジル・テレコム乗っ取りに対抗するためであった。両テレコムは、年金基金の大株主特権を巡って熾烈な争いを展開していた。