2006年5月30日(火)
海外日系人会館の保存署名に協力を――。神戸市で現在、一九七一年まで神戸移住センターとして利用された旧移民収容所を「国立海外日系人会館(仮称)」として整備保存するための署名運動が進んでいる。同センター内に事務所を置く在日ブラジル人支援団体「関西ブラジル人コミュニティー(CBK)」が中心になって行っているもの。同団体で現在、ブラジルからの協力を呼びかけている。署名は七月半ばをめどにいったんまとめられ、政府に提出される。
メリケンパークの神戸港移民船乗船記念碑をはじめ、日本移民の顕彰事業を推進する神戸市。今回の収容所保存運動も、多くの移民一世とその子孫が思いをはせるこの建物を残し、日本の移住史を後世に伝えようとする取り組みだ。
旧国立神戸移民収容所は一九二八年(昭和三年)に完成。戦前戦後を通じ、ブラジルはじめ南米各地に向かう移民の多くがこの建物で日本最後の夜を過ごし、新天地へ旅立っていった。その数は四十万人に上る。
戦争の影響で四一年に閉鎖。五二年に神戸移住斡旋所として再開。六四年に神戸移住センターと改称され七一年、日本の移住事業終了と共に役割を終えた。
建物内には在日ブラジル人支援団体「関西ブラジル人コミュニティー(CBK)」が事務所を置くほか、資料館や、芸術家のアトリエなどが置かれる。今年四月にはこの建物で三回目の「移民祭」が開かれた(四日付け既報)。
しかし建築から七十五年が過ぎ、建物の老朽化が進んでいるのが現状だ。
建物の保存運動を進めているのは、兵庫県、神戸市などの行政機関や地元関係者、日本の南米関係者からなる「国立海外日系人会館推進協議会」(会長=西村正・日伯協会理事長)。南米各国や、ここブラジルからも、兵庫県人会や文協、県連、各地の日系団体が海外委員として名を連ねる。
同協議会では数年前から、ブラジル日本移民百周年にあたる二〇〇八年に向けて、同センターを国立の「海外日系人会館」として整備保存する活動を続けている。これまでにも日本政府・外務省に対し要請を行ってきたが、実現にいたっていない。こうした現状を受け、昨年からCBKが「署名」という形で手伝いを始めた。
神戸を本拠に在日ブラジル人の支援交流活動に取り組むCBKは〇一年に設立。日本語、ポルトガル語の講座や青年交流、健康問題など、日本に暮らすブラジル人の支援や日本社会との交流事業に取り組む。代表の松原マリナさんはサンパウロ生れの二世だ。
在日ブラジル人の団体からはじまった移住センターの保存署名活動。どのような思いから運動に関わっているのか。
本紙の取材に対し「移民の歴史を残したい」と語る松原さん。「日本にいる人は移民のことを知らない。だから伝えるものを残したい。デカセギの人に居場所を残すためにも、ブラジルの文協的な存在の会館になれば」と思いを込める。
運動を展開するにあたっては、関係者に手渡しで署名用紙を渡し、活動の意味を説明しながら進めているという。「ただサインしてくれるだけでは意味がない」との考えからだ。
この活動に協力を申し出た(財)日伯経済文化協会が配布した署名協力依頼書が先ごろ、県連に届いた。県連でも各県人会に協力を要請している。
CBKは昨年末に推進協議会のメンバーになった。今後は同協議会も交え署名活動が本格化していくことになる。
署名は七月半ばごろをめどにいったん集められ、今年中に政府に提出される予定。CBKではブラジルからの申し出があれば、郵送または電子メールで署名用紙を送付する意向だ。「協力してもらえる人がいたら、知らせてほしい」と松原さんはよびかけている。
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関西ブラジル人コミュニティー(CBK)の問い合わせ先は次の通り。
【住所】650-0003兵庫県神戸市山本通3-19-8旧神戸移住センター4F【電話/FAX】81(国番号)-78-251-2522【電子メールアドレス】cbk.bras.01@tiara.ocn.ne.jp