PCC影の帝王の素顔=表向きは一受刑者=実力は大企業の社長並み=組織改革で勢力拡大
2006年5月31日(水)
【ヴェージャ誌一九五七号】ブラジル最大の都市であるサンパウロ市とサンパウロ州を手玉に取ったPCC(州都第一コマンド)のボス、マルコーラことマルコス・W・カマチョとは、何者か。当局の記録では犯罪組織のゴッド・ファーザーではなく、単なる銀行強盗であった。そのため、先週まで単純犯罪の一受刑者として服役していた。誰にも疑われることなく一年間、一万人の受刑者と外部のメンバー数十万人を統率していたが、マルコーラが隔離される理由も重罪人の証拠もない。口数は少なく、直接命令はしない。犯罪の天才は数千冊の専門書を読破、ダンテ著「神曲」の愛読者である。
四日間にわたったテロは、サンパウロ市民一一〇〇万人を恐怖のるつぼに突き落とし、軍警多数を血祭りにあげた。不夜城のサンパウロ市は死の街に化した。PCC蜂起の理由は、ボスを始めメンバー七六五人を重装備刑務所へ隔離したからだという。
マルコーラは三十八歳。初めて服役したのが一九九〇年。前ボスがベルナルデス刑務所送りになり、不在中の留守番役として二〇〇二年、マルコーラがPCCボスに就任した。マルコーラは鬼才だ。直ちに組織改革や綱領改正に取り掛かり、影の帝王としてPCCに君臨した。
組織の中にねずみ講を設け、収入は四倍に増えた。マルコーラ以前のPCCは銀行強盗集団に過ぎなかった。マルコーラは刑務所内に保護制度を設け、月五〇レアルを受刑者から徴収した。払わない受刑者には、因縁をつけて拷問したりオカマ役を強制した。
ブラジリアの刑務所でベイラ・マールと知り合うと、刑務所内外で麻薬販売を始めPCCの資金源にした。そうなるとPCCは人材と資金を容易に集め、組織拡大も速かった。
PCCはリオデジャネイロ市のコマンド・ヴェルメーリョと合弁契約を結び、麻薬の大販売網を築いた。さらに犯罪シンジケートを結成し、必要な資金と銃器、人材を提供。共謀者として誘拐や高級マンション強盗などの犯罪計画を指導した。
マルコーラの月収は、一〇〇万レアル。礼儀正しく言葉遣いも重々しく、ボスの貫禄もつけた。舶来の高級スーツを着用。時間があれば、犯罪学に没頭した。検察官はマルコーラの才能と博識に頭を下げ、犯罪から足を洗いカタギになるよう勧めた。統率力や組織の運営能力にかけては、大企業の社長並みの実力を有する逸材である。
マルコーラが、人生は得意な分野で生きるのが一番だと答えた。マルコーラにとって刑務所は打ち出の小槌らしい。米国にはブラジルの五倍、二〇〇万人の受刑者がいる。しかし、ブラジルで発生したほどの規模で、刑務所暴動が二十六年間起きたことはない。両国の刑務所はどこが違うのか。
違いは三つある。まずブラジルの刑務所はこの世の地獄だ。超満員で受刑者同士の殺し合いが、ストレスのはけ口になっている。PCCに加入しないと、拷問や虐待で生きていけないシステムになっている。刑務所職員がPCCの協力者であり、PCCの手数料が職員の懐を潤している。PCCと職員の腐れ縁が続くかぎり、ブラジルの犯罪者らは安泰といえそうだ。