2006年5月31日(水)
【エザーメ誌八六六号】アグリビジネスの王者となったエタノールは、石油に代わる新しいエネルギーとして注目されている。原油の高騰と地球温暖化を理由に、代替エネルギーとして世界はエタノールに新しい賭けを試みるようだ。
二代目に入った国内のエタノール精製企業は、国際金融から投資の呼び声がかかっている。二〇世紀が石油の時代なら、二一世紀初頭の十年はエタノールの時代といえそうだ。果たしてエタノール精製所が石油の油井を代替するのか。
ブラジルが自信を深めるのは、エタノール生産における国際競争力である。すでに世界シェアの四〇%を占めている。ガソリンへのエタノール混合は、日本を始めスウェーデン、米国で市民権を得た。ブラジルのエタノール生産者らは「熱帯の王たち」として一目置かれるようになった。
業界ランクではコザン・グループとクリスタルセヴィの一二億リットル、続いてウジナ・モエマの五億リットルがある。もはやエタノール産業ではなく、エネルギー産業を自認する。世界のエタノール消費量は過去四年間で七〇%増え、六〇〇億リットルとなった。
ブラジルでは現在、約三〇〇のエタノール精製所が操業している。どこでも、外国から資本参加の打診を受けた。最大手はコザン・グループで精製所を一六カ所有し、フランスのテレオスやドイツのスクデン、中国のクオクが既に資本参加をしている。
コザンは近代産業へ脱皮したが、多くはまだ視界飛行である。エタノール生産の歴史は植民地時代に遡り、家内制手工業が伝統で同族企業が多い。同族企業では、中心に法王がいて近代化への脱皮は難しい。外国資本との合弁にも踏み切れない例が多い。
エタノール業界にグロバリゼーションの波が押し寄せることは必至で、合弁は避けられない。同分野は世界へ市場を開放しているが、経営者のほとんどは根からのエタノール生産者ではない。今後のエタノール業界の動向に対し、プロの目を持っていない。
エタノール価格の乱高下への対処や世界情勢と相場の関係には、先行き見通しの分析ができない。原油が高値で推移するから、エタノール価格も安定している。年初にあった政府の市場介入がまたあるかも知れない。エタノールは、国内市場の需給関係で価格が決まる唯一の燃料だ。
政府はエタノール価格に設定規準を設け、市場介入を恒例化しようとしている。そうなるとブラジル産エタノールは、政治に支配されるので外国企業にとって魅力がなくなる。相場も落ちる。原油に対するOPECのようなことを政府が行うなら、エタノール産業は打ち壊しになる。