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恩を仇で返すモラレス大統領=背に腹は替えられぬと譲る伯

2006年5月31日(水)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十六日】モラレス・ボリビア大統領の選挙公約では、石油ガス資源国有化には触れていたが、ペトロブラスとブラジル企業には指一本触れないはずだった。それが、大統領綱領を指南した兄貴分ルーラ大統領に対する元コカイン王の礼儀であったはずだと、エスタード紙論説委員が背景を指摘する。
 ボリビアの大統領官邸ケマード宮に入るなり、モラレス(以下敬称略)は寝返ったのか。ペトロブラスは、既に一五億ドルをボリビアにつぎ込み、さらに三億ドルの追加投資を準備していた。ブラジルとの国境付近で銑鉄を生産するEBX製鉄も接収と発表した。
 モラレスは、理想とする政治家像の順位でルーラを格下げした。一番がカストロで、二番がチャベス。モラレスに石油やガスを活用する産業を興せと知恵をつけたのは、チャベスだ。それで、ペトロブラスを追い払う気になった。三番がキルチネル。最下位の四番が、最も恩がある兄貴分のルーラである。
 モラレスは、キューバを入れた五カ国が世界情勢を変えると思うほどバカではない。ブッシュ県で操業するEBX製鉄を追放か撤退させたら、何が起きる? 同県の工場労働者六〇〇〇人は失業する。年間四億ドルの輸出はご破算だ。
 ボリビア政府は、ペトロブラスが掘り当てたガス鉱床に採掘権を付与した。今はそれを返せという。ブラジルはギマランエス大使を送って善処交渉に当たっているが、ボリビア政府の言い分は理不尽で手前勝手である。
 ブラジルはこれまで、国際ルールに反したこのような政治手法を容認してきた。最初はチャベスに、今度はモラレスに。ブラジルは国内の急増するガス需要に応えるため、確実なガス供給を必要とした。そのため、背に腹は替えられない譲歩だったようだ。
 ブラジルの同盟宣言は現実に立脚したのが本音で、連帯は建前。ボリビア政府が税金をどう使うかが問題で、貧しいボリビア国民が餓死しようと、ブラジルの知ったことではない。モラレスには、契約書などあってないも同然なのだ。表向きは建前で繕っているが、本音は外交断絶の可能性も考慮する必要がある。