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多発する空港強盗に注意を=現職県人会長も被害に=本紙取材に事件を語る=サンパウロ市=総領事館「対策講じる必要」

2006年6月3日(土)

 去る一日、訪日していた熊本県人会の福田康雄会長が、帰国当日に強盗被害に遭っていたことが分かった。自宅に到着後、強盗集団に襲われたもの。空港からの帰路をつけられていた形跡もなく、周到に準備された犯行と見られる。今年に入って、デカセギ帰りだけでなく、旅行で訪日、帰国した日系人や、サンパウロを訪れた人がホテル入口で襲われる事件も発生している。二〇〇八年に向けて日伯両国間の往来が増えていくと予想されるこの時期、こうした事件が続いていては両国の人的交流にも影響を及ぼしかねない。抜本的な対策が望まれている。
 「こういう事件がはびこったら大変だな。二〇〇八年の移民百周年に向けて、これから多くの日本人がブラジルにやってくるのに。ブラジルに対するイメージも悪くなって困る。是非これから関係者には何らかの対策をとってほしい」――去る一日、空港からの帰宅直後に強盗にあった福田康雄・熊本県人会長は本紙の電話インタビューに答え、事件を振り返った。
 事件が起きたのは一日午前十時半頃。日本から帰国した福田さんがサンパウロ市イタケーラ区の自宅に到着した直後、自宅内で三人組の男に襲われ、現金八万円と手持ちのレアル、友人への土産などを奪われた。幸い本人、家族ともケガはなかったという。
 その日、福田さんは当初の到着予定より二時間ほど遅れて午前九時ごろグアルーリョス空港に到着。すぐに、日本へ出発する前に連絡してあった十年来の馴染みのタクシーを呼んだ。タクシーの運転手が来るまでの二十分間、「空港には怪しい人間はいなかった。十分気をつけていました」と語る。
 すぐに運転手とともに荷物をトランクに。家までの道中「車の後ろには人はいない。大丈夫だな」と会話を交わしていたという。
 イタケーラの自宅に着いたのは午前十半前。「当然回りには気をつけて降りました」と福田さん。すぐに荷物を取り出し玄関へ。家族が鍵を開け、運転手が残りの大型トランクを取りに車へ戻った。そして間もなく、隣の部屋に移動した福田さんのわき腹をつつく感触があった。
 「金を出せ。危害を加える気はない」――手にはピストル。落ち着いた一言を放つ三十五、六歳の男が立っていた――「すぐに強盗だとわかりました」。手持ちの現金を渡すと、すぐに運転手が男二人にピストルをつき付けられながら部屋に入って来た。
 「後ろを向くな。壁を向け。顔をみるな」。福田さんと家族、運転手が壁に立たされている間、犯人が隣の部屋から他の家族を連れ部屋に戻り、福田さん以外はトイレに入れられた。
 犯人は執拗に現金を要求。福田さんが「日本に仕事をしにいったわけではないし、金もない」と言うと、トランクをナイフで切り裂き、中をあさった。その間福田さんもトイレに入れられ、犯人が帰るまでじっとしていた。
 犯人は帰り際、「俺らの顔をみるな!」と言って去っていったという。
 他にも見張りとドライバーの男二人がいたと見られる。「犯人たちは用意周到に準備してきたプロです。身なりもとてもしっかりしており、一見強盗団とはわかりません。堂々としていました。正直犯人ながら関心したものでした」
     ◎
 頻発する空港強盗。在伯邦人が被害に遭う事件が度々起こっていることから見ても、在伯日本公館としても何らかの対応を迫られる状況と言える。
 サンパウロ総領事館では「今のところ具体的な対策はありません。被害の情報を集めて安全対策を出させて頂いてはいますが…」とコメント。現状を踏まえ「これから二〇〇八年の移民百周年に向けて、警察とも連携をとって対策案を講じていきたいと思っています」と話している。