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JICA青年ボランティア リレーエッセイ=最前線から=連載(45)=名村優子=エステ日本人会(パラグアイ)=国境の町の学校

2006年6月8日(木)

 ここは、ブラジルとの国境の町、パラグアイ国エステ市。国際的な観光都市フォス・ド・イグアスから「友情の橋」を渡ると、そこは露店と看板が立ち並ぶ買い物天国、エステ市のセントロだ。
 雑然としつつ活気のある町並みが、香港などアジアの町に似ている、と言う人もいる。派遣前、「エステなら生活に不自由はしないよ。南米ではサンパウロの次に物が揃う場所だから」と言われたが、本当にその通りだった。
 DVDデッキを四十ドル台で売る電化製品ビルがある。台湾風かき氷が食べられる中華食材店がある。グアラニーの人たちが手織りのかばんやアクセサリーを道の上に広げている。海賊版のCD・DVDを売る露店が立ち並ぶ。
 この町では、パラグアイの通貨グアラニーはもちろん、ドル、レアル、ペソでも買い物ができる。だからグアラニーで支払いをしても、おつりがドルやレアルで返ってくる事がある。
 住民の顔ぶれも多彩で、パラグアイ人と近隣のブラジル人、アルゼンチン人などの他に、中国・台湾系、韓国系、アラブ系、インド系、ドイツ系、イタリア系等の移住者も多く住んでいる。 
 そして、この多国籍の町に住む日系人は約五十世帯。日本人会が運営する日本語学校には、現在四歳から十七歳までの生徒が三十九名在籍している。生徒の多くは日系二、三世で、ブラジル側から橋を越えて通ってくる生徒や中国人の生徒もいる。
 学校の規模は小さいのだが、年齢差と能力差は大きい。日本と同じように学年通りの国語教科書で授業ができる子もいれば、数年通って、やっと最近日本語が口をついて出るようになった子供もいる。
 同じ「あいうえお」を教えるのでも、幼稚園の子と十七歳の子を一緒のクラスに入れる事はできないから、当然クラス編成は複雑になる。
 一クラスの生徒数は一人から三人とほとんど個人授業に近いが、その二、三人が複式授業の事もある。そしてまた、個人授業をするだけの教師数の確保が必要になる。運営する日本人会の苦労を思いながらも、複式授業の進め方に頭を悩ませる日々だ。
 そもそも教育は、効率や採算性といった考え方にはなじまないところがあると思う。子供を育てるのには多くの労力、お金、時間がかかるが、それはどこかで「元が取れる」というものではない。たくさんお金と時間をかけたら、その子が本当に「良く」育つかというと、そうとは言い切れない。
 もしかしたら、ある教育の結果が、その子供に悪い影響を与える事もあるかもしれないのだ。私たちは、何を教える事がその子供を幸せにするのか、一人一人の顔を見ながら考えていかなければならない、とここエステで思っている。
   ◎   ◎
【職種】日本語教師
【出身地】茨城県那珂郡
【年齢】31歳