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コラム 樹海

 邦字紙しかりNHK国際放送しかり、日本の情報はブラジルにおいても湯水のように溢れている。しかし日系社会の話は、日本の人はまったくといって知らない。〃片思い〃の状況が延々と百年近く続いている▼日本の大手出版社で「日系人、移民に関する本を出したい」と持ちかけても、「地味すぎる」「売れない」と原稿すら読んでもらえない。かつて日本でブラジル人といえばサッカー、サンバ、コーヒーだったが、今ごろは〃犯罪者〃とすらイメージされるらしい。あまりに悲しい現実だ▼今回のドミニカ移民訴訟では大量の記事が日本で出回った。移民に対する「祖国に騙された悲惨な人々」というイメージをそうとう強化しただろう▼だが、移民はみな、その記事にあるように「悲惨な人々」なのか。現実にはいろいろな人がいる。明るい未来もあるし、新しい良いものも生まれている。邦字紙にはそのような記事もでるが、日本在住者の目にふれることはほとんどない▼日本でニュースになるのは米倉さん一家殺害とか、PCC暴動で百五十人殺されたとか、ブラジリアの国会で土地なし農民が破壊行為を働いたとか、ほんの断片にすぎない▼もう少し幅広い日系社会の情報が日本の書店や図書館でも簡単に手に取れれば――そんな発想で『海を渡ったサムライたち(邦字紙記者が見たブラジル日系社会)』(ニッケイ新聞編集局報道部著、幻冬舎ルネッサンス)は企画された▼図書館においてもらえたら幸いだが、そうなるとは限らない。これを機に、少しでも日系社会の存在に気づいてくれる人が増えることに期待したい。(深)

06/06/08