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エイズ発生から25年経過=2500万人が死亡=ブラジルは感染者60万人=積極的に対応する伯政府

2006年6月9日(金)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙五日】医学界でこれまでにない新しい症状の病気が確認され、「エイズ」と名付けられて、今月五日で丸二十五年が経過した。突如地上で発生したエイズは以来二十五年間、全世界で二五〇〇万人の命を奪うとともに、現在でも猛威をふるっている。世界の感染者数は三八六〇万人と言われ、昨年のみで四一〇万人が発病、二八〇万人が死亡した。この期間、医学界の必死の研究にもかかわらず、確たる治療薬が発見されていない。世紀の疫病の現状を追っ掛けてみた。
 アメリカで皮膚ガンや肺炎に類似した症状の病人が出現し研究が進められた結果、医師グループがこれまで医学界で例のないHIVウイルスを発見、「エイズ」と名付けられた。一九八一年六月五日のことだった。
 このグループは発病の経過をたどっていく中で、すべての患者がゲイで、カナダ人の飛行機搭乗員と一様に性交渉を持った事を突き止め、感染源と断定した。しかし、この搭乗員の感染経路は分からずじまいとなった。このため医学界では当初ゲイのみに発生する病気と位置づけていた。
 しかし、病気がまん延する中で、女性の患者が多数出現、さらに妊婦から子供に感染する事実が確認され、広い範囲での法定伝染病に指定した。HIVウイルスを突き止めたものの治療薬は開発されず、そのためにエイズは瞬く間に世界中に広がり、これまでに二五〇〇万人が命を落とした。
 第一号患者確認から六年が経過した八七年に、ようやくワクチンAZTが開発されたが、投与当初は効果があるが次第にHIVウイルスが免疫力を発揮して効果がなくなった。その後、九四年に種々の薬を配合したカクテルと称するワクチンが開発されて現在に至っている。しかしAZTにしてもワクチンにしても病気の進行を止めるのみで根本的な治療薬ではない。
 世界保健機関(WHO)が各国政府のエイズ対策が手ぬるいと不満を表明している中、ブラジル政府は積極的に対応している、ブラジルでは感染者が六〇万人といわれ(昨年の新規感染者は三万八八六人だった)、このうち治療が必要と診断された十七万人(二〇〇四年現在)すべてに対応しているという。
 ブラジルは他国に先がけワクチンを無料配布している。さらに外国の製薬会社がワクチンを値上げした場合は国際特許を無視して国内製造に踏み切ると爆弾宣言をして注目を浴びた。
 世界の現状を見ると、最も惨状を呈しているのが、アフリカのサハラ砂漠近隣諸国で感染者は二四五〇万人。治療を要するのが四七〇万人だが、このうち一七%しか対応されていない。このため毎年二七〇万人の新規感染者が出ている。
 北米大陸(アメリカ、カナダ)では感染者一二〇万人で、治療を要する二十一万人の七〇%が対応を受けている。新規発病者は毎年四万三〇〇〇人となっている。ラテンアメリカ圏内は感染者が一九〇万人、治療を要する四六万五〇〇〇人のうち六八%に対応がなされている、毎年の発病は一八万人。
 ヨーロッパと中央アジアでは二三〇万人が感染、十六万人のうち一三%に治療が施されているのみ。東南アジアとオセアニア州では八二〇万人が感染、一一〇万人の病人にわずか一六%の対応で一一〇万人が毎年発病している。北アフリカと中近東では四四万人が感染、治療が必要な七万五〇〇〇人のうち、わずか五%が対応されているのみで、ほとんど野放し状態となっている。