2006年6月14日(水)
【エスタード・デ・サンパウロ紙五月十五日】ウイーンで開催されたEUラテンアメリカ首脳会議で、フランスのシラク大統領がルーラ大統領に「大衆路線をとる左翼の台頭は、ラテンアメリカだけの特異な現象ではないか」と意見し、会議の議題から一蹴した。
EUでは鼻にもかけない議題だが、南米では大問題。世界各国は二〇〇三年以降四%以上の勢いで経済成長をしているのに、ブラジルは一九七〇年代以後低迷。シラク大統領は、それをラテンアメリカの努力不足とし、EUとは関係ないと言いたかったらしい。
世界経済の好調は二つの柱が支えている。米国の消費と中国の生産である。例外は内戦に明け暮れ、エイズ対策に悩まされ、政府要人は公金を盗み放題のアフリカ諸国。堅実に経済発展を遂げた国と停滞している国のムラは甚だしい。それでもアフリカは、アジアの七・一%に次いで五・五%だ。三番目が東欧と中欧の四・五%。
一番ダメなのは、ラテンアメリカの三・七%。ラテンアメリカをダメにした男は、チャベスとモラレス、ウマラ、オブラドル、昔のルーラなど、ネオリベラリストの面々と思われているらしい。貧困の原因を先進国の帝国主義の責任に転嫁し、構造改革を怠り、国有化に走るからだというのがEUの見方。
これは、会議の主役を気取るチャベス大統領に対する先入観でもあった。ところが同会議は、社会主義の牽引車となる能力があるならと、チャベス大統領を旗頭として迎えることにした。新民族主義が正しいなら、途上国は構造改革とグロバリゼーションに逆らって、独自の力で成長する姿を見せろというのだ。
現実に高度成長を遂げた中国やインドは、率先して資本の自由化と市場開放を行った国であるという事実をどう見ているのか。ラテンアメリカに、中国やインドをまねた国があるかとEUは問う。ボリビアは、ペトロブラスが開拓したガスと石油だけが主な税収と雇用ではないのか。
他にボリビアが何をしたのか。大豆もブラジル人が栽培した。大豆アグリビジネスに近代農業と資本を持ち込んだのは、ブラジル人ではないか。新しく台頭したボリビアの左翼民族主義は、ブラジル人が蓄積した実績を代替できると思っているのか。
EUから指摘された問題を、ブラジルは過去の実績と比較する。後を向いて走り、まだ後がいるからビリではないと思っている。対米輸出に力を入れた国々は同期間、四倍も実績を挙げた。もしも過去四年間に輸出で顕著な成績を挙げたら、さらにその前の四年間に前政権がその基礎を築いたことを忘れるなというのだ。