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麻薬戦争は組織に軍配=社会疎外者取り込みに成功

2006年6月14日(水)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十日】社会学者のエリオ・ジャグアリベ氏は、サンパウロ市やリオデジャネイロ市などブラジルの大都市が犯罪都市と化し、麻薬戦争は麻薬密売者に軍配が上がると話す。麻薬組織が地方自治体の上に君臨するコロンビア並みの犯罪王国だとみる。
 ブラジルの過疎地に犯罪集団がたむろしたのではなく、サンパウロ市やリオ市などの大都市に浸透し、国家の治安が脅かされているのだ。これは地方自治体の単なる治安問題ではなく、政府と州、市が一丸となって取組むべき底辺社会への対策だという。
 ブラジルの人口構成で大きな部分を占める社会疎外者、低学歴市民の間に麻薬組織が根を張り始め、大都市を包囲したのだ。低所得者が生きる術を求め、麻薬組織が提供することで両者は融合した。犯罪予備軍はPCC(州都第一コマンド)の求人に応募の列をなしている。
 治安当局がPCCメンバーを一掃しているが、PCC予備軍は蟻の大群のように群れをなしている。さらに刑務所では受刑者と刑務所職員の癒着が新しい問題を育んでいる。携帯電話によるPCC連絡網も高度化し、全国レベルに発展するのも時間の問題といえる。底辺社会はブラジルの病根となったのだ。
 麻薬がブラジルに持ち込んだ悩みは、複雑な要因が絡んでいる。莫大な数の市民が社会から落ちこぼれ、そこへ犯罪人が貧困から救われる安易な方法を教えた。多くのPCCメンバーは、貧困と無教育が生んだ犠牲者である。
 もう一つの問題は、PCCを政治的に利用するグループの存在だ。PCC生みの親は一九八〇年頃に活動した左翼革命前線の要員であることを知る人は少ない。初期のPCC幹部は、ブラジルで財を築き、優秀な弁護士を雇った。サンパウロ市で起きた大規模の背任行為や麻薬取引、凶悪犯罪の九〇%はPCCが関係している。PCC幹部は刑務所に服役中でも上納金の取り立てが厳しい。

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