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「和太鼓の修理もします」=パラグアイ=イグアスー移住地の工房=30数年前製作の日本製=パラー州=ベレンから持ち込まれる

2006年6月21日(水)

 パラグアイのイグアスー移住地で、十六日、ブラジル・ベレンの汎アマゾニア日伯協会から持ち込まれた、三十数年前に作られた太鼓の皮張り替え作業が行われた。作業を手掛けたのはイグアスー太鼓工房。この工房はイグアスー日本人会(福井一朗会長、岩手県出身)の一部門として、本格的な和太鼓作りに取り組んでいる。
 皮の張り替えがなされた太鼓の表面には〃贈・福島県知事・木村守江〃と筆書きされている。
 内側に昭和四十三年九月吉日、福島県田村郡三春町・松島太鼓店新調、御太鼓師・松島正智、と記述されているので、昭和四十三年(一九六八年)かその翌年に当時の福島県知事から汎アマゾニア日伯協会に寄贈されたものであろう。
 イグアスー太鼓工房は、〇六年六月に発足(本紙・〇三年十一月二十六日報道)。ベテランの石井吉信さん(72、山形県)を棟梁に、幸坂佳次さん(秋田県)、黒沢貢次さん(群馬県)らが太い丸太をくり抜いた本格的な和太鼓作りに取り組む。
 最近は移住地生まれの大山嗣彦くん(19、二世)が丁稚奉公のような形で技能習得に励んでいる。嗣彦くんは今年の初め、二カ月かけて日本各地を周り、太鼓作りの現場を視察してきたほど伝統技能の継承に熱心な若者だ。
 東京芸術大学教授で日本伝統芸能の大御所の一人を父に持つ和太鼓奏者の澤崎琢磨・雄幾兄弟(本紙・〇二年七月二十七日報道)も太鼓作りに関わっている。この移住地が好きで兄弟で移り住んで来た。
 皮の張り替えとはいえ、材料の牛革を塩浸けにしたり洗ったりして、太鼓に張りつける状態にするまでに、二~三カ月を要する。皮は呼吸しているため、カバンや財布に細工するようになめしたものではだめで、生皮でなければならない。
 太鼓に張った牛皮を数台のジャッキで引っ張りながら、一人が皮の上(つまり、太鼓の真上)に登り、足で踏んで皮の張り具合を確かめる。〃感触〃が決め手のため緊張が強いられる。それを更にジャッキで引いて皮に張りを持たせる。
 太鼓は打楽器の一種なので、皮の表面をバチで叩きながら音色を調節する。澤崎兄弟のような太鼓奏者の感性が求められる場面だ。皮の張り具合と音色が決まったら、張りがゆるまないよう即座に鋲を打って留める。作業を見ている者も一様に緊張する場面だ。
 南米大陸でくり抜き和太鼓を作っているのは、イグアスー太鼓工房だけであろう。パラグアイ国内だけでなく、すでにブラジル(ベレン、サンパウロ州のアチバイア、リオデジャネイロ、弓場農場など)とアルゼンチンでも「イグアスー産」和太鼓が購入され好評だ。
 「和太鼓の生産と修理(皮張り)をお任せ」は、イグアスー移住地のもう一つの文化の顔だ。