2006年6月21日(木)
【エスタード・デ・サンパウロ紙二十一日】従業員を始めとする関係者の必死の再建工作にもかかわらず、ヴァリグ航空は営利企業として末期症状を呈している。
同航空は二十日、一日の定期運航二〇八便のうち、半数以上に相当する一一八便の運航をキャンセルした。さらに二十三日までに七〇%が欠航することを明らかにした。
欠航の理由は航空機のリース料不払いで、ニューヨーク地裁に差押えの訴えがなされたことで、二十二機が使用できずお蔵入りとなり、さらに十六機が修理や調整に回されたことで、運航可能なのはわずか二十三機であるのが原因。一年前には七十機が就航していた。
差押えを表明したのはボーイング社などの三社だが、新たに日商岩井などの二社が計五機につき同様の措置を取るものとみられている。二十二機のリース機はアメリカ企業の所有で、同国内に着陸するとその場で差押えとなることから、ヴァリグ航空ではアメリカ向の定期便を全て運航停止にした。わずかにフランクフルト、マドリード、ロンドン便が運航しているものの、いつキャンセルになるか分からない状態となっている。
国際航空協会(IATA)では、ヴァリグ航空発行の搭乗券のエンド―ス(ヴァリグが裏書した上で他社のフライトに乗るもの)に応じないと決定した。TAPとルフトハンザ航空だけがスターアライアンス同盟を結んでいることから、エンド―スに応じている。
二十日のサンパウロ国際空港(クンビッカ空港)では、ヴァリグ機の相次ぐ欠航で待合室がゴッタ返した。代替便のめども立たないまま、一昼夜を空港で過した乗客も多く見られた。リオ―サンパウロ間のポンテ・アエレア(シャトル便)は通常十三便だが、わずか二便が運航したのみだった。何時に搭乗できるか保証がないことで他社のカウンターに並んでいた。
同航空が重大な局面を迎えたことで、民間航空も統轄するピーレス国防相はサジを投げた格好で、「人間に死があるように、企業にも最期があるものだ」とした上で、最期まで全力を尽したいと語った。
同相の肝入で政府内に対策室が設置されて、第一回目の会合が二十日に行われたが、ヴァリグ亡き後の各社のシェアー分担に話が集中した。同相は倒産もやむを得ないとの認識を深めながらも、永年にわたりブラジルの空の顔として君臨してきた同航空を潰すのは、ルーラ大統領の再選キャンペーンに悪影響を及ぼすと危惧している。
いっぽうで航空業界ではサッカーのワールドカップ観戦にでかけたブラジル人の帰国を心配する声が挙っている。予選観戦のみで帰国する人も多く、二十三日以降にラッシュとなることから、緊急対応が迫られている。政府筋では最悪の場合、空軍機の出動も検討しているという。