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少年更生への険しい道のり=大半が再び悪の道に=幼少時の環境が尾を引く=それでもあきらめない

2006年6月23日(金)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十一日】罪を犯して青少年更生施設(フェベン)に収容されたが、保護観察で仮釈放となっている未成年者は全国で三万九〇〇〇人に達している。そのうち五五%はサンパウロ州内となっている。これらは更生への道を模索しているものの、幸運にも社会復帰をなし遂げるのは一握りの数に限られ、多くは現実が甘くないことに直面している。努力の末に美術大に進み、定収入を得ることができた少年もいれば、就職初日に昔のツケを払っていなかったことで犯罪組織に殺害されたのもいる。昔の仲間の甘い誘惑に負けて、犯罪人に戻るケースが大半を占めている。
 サンパウロ市内で更生施設に送られる未成年の犯罪者は、決まって貧困集団のファベーラ(スラム街)で生れ育った。ファベーラでは麻薬常習者やアルコール中毒患者の集団を土台に犯罪組織が形成されている。
 少年らは悪の温床で育ったことで、犯罪人同志の抗争、酔っ払いのケンカ、家庭内暴力は生活の一部として浸み込んでおり、殺人などへの免疫力がついている。幼い時から死体の傍らで走り回って遊んだ経験を持っている。このため麻薬吸引から始まり、盗みに手を染めるのはお決まりのコースとなっている。
 施設の収容者は東部と南部のファベーラの少年がトップランキングを占めている。東部のグァイナーゼス、イタイン・パウリスタ、イタケーラ、シダーデ・チラデンテスの各区で四〇%を占めている。南部のアメリカノポリス、ジャバクアラ、カッポン・レドンド、エリオポリスの各区が三一%で続いている。
 いずれも家族の収入が最低賃金の二倍以下の貧困層で、九〇%は小学校を卒業していない。施設によると二〇%は再犯で戻って来るとしているが、サンパウロ州連邦大学の調査では、半数近くが再犯で逮捕されるとの結果となっている。この中には殺害されたり刑務所送りとなったのも含まれている。
 保護観察になった少年のうち、二〇〇五年一月から今年五月までに一九二人が殺害されている。二日半に一人の割合だ。いかに犯罪組織から足を洗うのが困難なことかが実証されている。政府やNGO団体が就職の門戸開放運動を繰り広げているものの、前科者を好んで採用する会社はない。さらに親族や家族に必ずと言っていい位、犯罪者がいることもネックとなっている。
 それに引き換え、犯罪組織にいつも職(?)があり、即刻復帰できるのも更生の妨げとなっている。就職しての給料が二〇〇レアル(未成年の最賃)に対し、犯罪組織で麻薬密売の係になると週四五〇レアルの収入となり、ぜい沢三昧の生活ができる。
 二十二歳のフェルナンドさんは成功者の一人に挙げられている。お定まりのコースに入り十三歳で麻薬を覚え、やがて盗みから麻薬密売の主任となった。一日の売上が一万レアル以上で使い切れない程の収入を得た。施設に収容されても大脱走で抜け出した。
 しかし警察との衝突やライバルとの抗争に嫌気がさし、身の危険もあり組織を脱会した。無一文になったのをNGO団体に拾って貰い、学校に通い絵の勉強をした。才能があったことで頭角を現し、現在は入れ墨師として生計を立てている。
 いっぽうで仲間だった少年は印刷所に就職が決まったが、出勤初日に殺害された。昔の仲間と麻薬売買によるイザコザが原因だった。十七歳の少女は就学を希望して八つの学校を訪ねたがいずれも門前払いを喰った。彼女は九歳で麻薬常習となり十一歳で恋人と同棲、その後は売春婦に転じて施設行きとなった。それでも更生への道をあきらめないでいる。