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「電子有機農業」の現場見る=グァラチンゲタ=ジェム社農場で体験会――野菜に加え、カフェも栽培=化学肥料栽培で荒れた農地をよみがえらせる

2006年6月24日(土)

 熊本に本社を構え有機農法の普及に取り組む「株式会社ジェム」(新留勝行社長、63)は、二十日、サンパウロ州グァラチンゲタ市のブラジル支店で、地元の行政担当者や関係農家、メディアなどを招いて農場の視察・体験案内会を開いた。「身体に優しく安全な農作物が作られる現場を実際に体感し、同社独自の電子有機肥料を広く理解してもらうこと」が目的。関係者のあいさつ後、併設農場の見学や有機農作物の試食会などが行われ、訪れた関係者は荒廃した大地に色鮮やかな美味しい作物を育てあげる同社の技術力に、終始感嘆した様子だった。
 同社は農業を営む在伯の新留社長の義兄からの要請がきっかけとなって、一九九六年にブラジルへ進出。新留社長は来伯当初「ブラジルは豊かな大地が広がり、将来世界の食料基地になる」と期待していたというが、実際に多くのブラジルの農地が化学肥料の使用によって荒廃している様子を目の当たりにして愕然。「無数に点在するアリ塚の柱がまるで大地の死を象徴する墓標に思えた」と当時を振り返る。
 このような現実にも関わらず、新留社長は長年の研究の末開発した独自の電子有機肥料を使えば、「必ずブラジルの農地は蘇る。そして将来世界の食料危機を支える存在になる」と確信。グァラチンゲタ市長の要請もあって、旧知の仲である「株式会社クッキー」の堀芳夫会長や「上谷田建設株式会社」の上谷田重樹会長らからの融資を受け、二千万円で現在の工場と農場を設立、「不毛の地」から安全かつ美味しい作物がとれるよう毎年改良、発展させてきた。
 「現在は投資の段階で利益は得られていません」と新留社長は話すが、レタスやバナナ、トマト、ナスなど様々な野菜を栽培し、サンパウロ大都市圏の富裕層や地元の外食店向けに出荷できるまでに成長。将来的には有機野菜としてのブランド価値を武器に「アメリカ、ヨーロッパ、日本へと流通ルートを拡大していきたい」と語る。
 この有機野菜の栽培に加えてコーヒーの栽培が三年ほど前から始められた。「ジェムの技術をもって、ブラジルコーヒー発祥の地にもう一度豊かなコーヒー農園を復活させたい。農業者たちが荒らしてしまった農地を日本の企業の力よって蘇らせるのは、グァラチンゲタへの償いになるのでは」―そんな新留社長の想いがきっかけだった。
 同市は四十年ほど前まで、コーヒーの一大生産地して栄え、経済も潤っていた。しかし、化学肥料栽培のツケが重なり、「豊かな土壌」が「不毛の大地」へと変化、「働き手も大都市へ流れ、治安も悪化した」という背景がある。
 現在はそれまで何度コーヒーの苗を植えても根付かなかった土地から「成長も早く、砂糖を入れなくても甘味がするほどのコーヒー豆を収穫できるようになった」と新留社長は喜ぶ。その出来栄えは案内会で試飲した関係者の笑顔が物語る。
 見学に訪れた鹿児島県人会の天達市雄会長は「ジェムの活躍は、ブラジル社会へのインパクトが大きい。きっと日本に対するイメージも良くなることでしょう」と話した。
 今後はジェムの技術を近隣の農家にも広め、「アリ塚で埋まった農地を、実り豊かな一大コーヒー農園へと変えていきたい」と新留社長は話す。そして「グァラチンゲタをきっかけに、有機農業の波を日本をはじめ世界中の国々へ広げていきたい」と意気込む。
 なお農場の見学などはいつでも歓迎とのこと。連絡は、ブラジル支店代表のパウロ・コージさんまで。電話(12・3132・6082)同社ホームページ(日本語)http://www.jemsys.co.jp/index.html