2006年6月24日(土)
「最高レベルの方の往復を補佐させてもらった。トップの交流は国と国の関係を前進させると痛感した」。外務省から六月一日付けで帰国令がでていた堀村隆彦駐箚特命全権大使は二十一日午後、サンパウロ総領事館で記者会見を開き、二年余りの在任期間を振り返った。
堀村大使は〇四年五月に着任。同年九月には小泉首相来伯、翌〇五年五月にはルーラ大統領の訪日など首脳レベルの交流を支えた。九七年から九九年のサンパウロ総領事時代には両陛下の来伯にも立ち会っていた。
在任中の主な課題として二点挙げた。「停滞気味だった経済関係の再活性化」および「百周年、日伯交流年」だ。
経済関係に関して、エタノールの日本への輸入は両国首脳が意見交換した内容を、官民合同で取り組んでいる。五月には日本で事務レベル協議も開かれており大きな進展がみられる。
加えて、ブラジルのデジタル方式選択に関して、日本方式売込みを陣頭指揮してきた堀村大使。米国方式、欧州方式との競合の末、選ばれた。その過程で、EU連合加盟国の大使らが大挙してブラジル政府に圧力をかけるなど、外交手腕の問われる場面もたびたびだった。
記者会見時点では「未定」だったが、翌二十二日午前にブラジル外務省から採用の正式連絡が入った。日本の技術をベースにブラジルで開発したものを加える「日伯方式」だ。百周年を目前に、今後十年間の日伯科学技術交流の柱のひとつが、これで決まった。
国際協力銀行(JBIC)はブラジル側に関連インフラに五億ドル(約五百八十億円)規模の融資を申し出ている。
時事通信によれば、ブラジル内のデジタル放送関連市場は十年間で二百億ドル(約二兆三千億円)に達する可能性がある。ブラジル政府はメルコスール全域で同方式を採用するように働きかけており、市場はさらに広がる可能性がある。
〇八年を目前とする絶妙なタイミングであり、巨額な投融資の流れに伴い、関連企業の進出や人の流れも促進させることが予想されている。
ブラジル側は産業の近代化を望んでおり、日本はそのための技術者などの人材育成も支援する。科学技術の支援を軸に両国間の交流がいっきに広がる可能性があるようだ。