ホーム | コラム | 樹海 | コラム 樹海

コラム 樹海

 イラクは寒くて暑い。3月までは氷点下が続き4月になると50度を超す熱気が大地を焼く。確か世界一暑いの記録もイラクであり、サマワに派遣された陸上自衛隊の第10次隊・山中敏弘一等陸佐の報告だと「55度を超す暑さ」だそうだ。こんなに気温が高くなると電線に止まった小鳥が焼け死ぬと耳にしたが、人の苦しみも、我々の想像を越える。砂嵐と停電もあるし、蠍もいれば毒蜘蛛もいる▼こんな厳しい自然条件の下で陸上自衛隊は2年半もよく頑張った。第1次隊の番匠幸一郎1佐は、将来の制服組トップになると目される有能な将校だが現地では「義理と人情」で住民らと接し好評だった。髭の隊長と親しまれた佐藤正久1佐などの指揮官らが陣頭に立って人道支援に努めサマワ市民らの評価も極めて高い▼陸自派遣を批判する向きもいるが、医療支援などの成果は大きい。自衛隊の活動でサマワの新生児死亡率は、この2年間で3分の1に減ったのを見るだけでも、その効果がよくわかる。ユーフラテス川の汚れた水を浄水して給水する手助けが、数多くの人命を救ったのである。「水」を一つ取り上げるだけで人の命を救い未来の発展に繋げる―このような支援こそが大事にされるべきは論を待つまい。兵士らも汗と砂に塗れながら「サマワの人々のために」と死に物狂いで働いた▼兵らの中には夫婦で参加した勇敢な戦士もいたが、何よりも喜ばしいのは1人の死傷者も出さなかった幸せである。8月中に陸自は撤退を完了する予定だが、最後までこれまでの「死傷者なしの奇跡」を信じ無事な帰還を祈りたい。(遯)

06/06/24