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被爆者の人生を記録する映像作家の竹田さんが来伯

2006年6月29日(木)

 それぞれ違う人生を歩んできた被爆者たちの証言を未来へ―――。
 アメリカ、メキシコ、アルゼンチンなどに住む在外被爆者の証言を記録に収めてきたアメリカ在住の映像作家、竹田信平さん(27、大阪府出身)が今月二日来伯、二週間にわたり、在伯被爆者たち約十人に取材した。
 記録された証言映像は、国立長崎死没者追悼平和祈念館のデータベースに保存される。
 毎月第三土曜日にサウーデ区の日本食料品店「スキヤキ」で会合を行っている在ブラジル原爆被爆者協会(森田隆会長)も十七日に訪れた。竹田さんは「アメリカにもアルゼンチンにもない〃憩いの場〃があるブラジルはまた被爆者を取り巻く環境も違う」と比較する。
 会合では、竹田さんがプロダクションマネージャーとして製作に携わった「最後の原爆」(ロバート・リクター監督)の上映会が行われ、意見交換もあった。
 作品は、核保有国で長崎の被爆者と二人の若い平和活動家が原爆の悲惨さを伝える活動を追ったもの。原爆投下後の記録映像も折り込まれ、過去と現在が交錯する臨場感溢れる仕上がりとなっている。
 なお同作品は、今月六日から十一日まで、ゴイアス州ゴイアス市で開かれた第八回国際環境映画・ヴィデオ祭で報道賞と佳作に選ばれている。
 二歳の時、広島で被爆した渡辺淳子同協会理事は、「広島や長崎でも関心を持たない人がいるなかで、後世に歴史を残していくのは大事なこと」と作品鑑賞後の感想を話した。
 広島に比べ、認知度が低い長崎を原爆による最後の被爆地にしたいという思いから製作された同作品について、「戦後六十年を経たが、現在の問題でもある核の恐怖を次世代にどう伝えていくかが課題」と竹田さんは表情を引き締める。
 今秋には再度ブラジルを訪れ、アマゾン在住の被爆者にも取材を行う予定だ。
 「それぞれの人生を通し、平和とは何かを訴えるドキュメンタリーも作りたい」と熱を込め、話した。
 森田会長は、「一人でも多くの人に『最後の原爆』見てもらいたい」とDVDの貸し出しを受け付けている。希望者は在ブラジル被爆者協会(電話11・2577・0323)まで。