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ロドリゲス農相が辞任=政府の農業軽視に失望=現経済政策で農家救済不可能=後任は農地改革優先者か

2006年6月30日(金)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十九日】ロドリゲス農相が二十八日、ルーラ大統領に辞表を提出していたことを明らかにした。現政権の保守的な経済政策では農業生産者の窮状を救済できないため板ばさみになっていたこと、大統領の再選運動参加を強要され、同相は政治家ではないことを理由に断っていたなどが辞任の理由と推測される。同相の辞任により農業生産の反当り増産計画は農地改革による生産を外すことになり、農地占拠運動(MST)を増長させるものと思われる。同相の後任として、農地改革専門のピント農務次官と農政担当のウエデキン技官の二人が浮上している。
 農業不況にあおられた二年間を含む在任中、同相は苦戦続きであった。同相は大統領と夕食した二十七日夜、大統領の再選運動に参加の意思がないこと、現経済政策が崖淵の農業生産者を看過していることを明言。また現政権が農地改革のために採る農地類別方式に合意できないことにも言及した。後任は三十日の農相辞任の正式発表までに人選の予定である。
 同相のアグリビジネス四十年の体験においても、過去二年間は最悪という。農業生産者が三〇〇億レアルの資産を失いながら善後策を打ち出せなかったこと。またマット・グロッソ・ド・スル州とパラナ州の四十一カ所では、口蹄病が発生。二〇〇六年五月の農業包括案に未決済の〇五年度農業融資は含まないなど、同相の苦悩は絶えなかった。
 同相は辞任覚悟で農業救済の再融資予算を請求したが、追加予算は次回通貨審議会の決議次第と一蹴された。同相は大統領のお墨付きを盾に農業救済で数々の約束をした。農業包括案を優先する政府は、それを反故にした。同相は財務省へ予算交付の説得に赴いたが、徒労だった。
 ブラジルの切り札ともいうべき農業だが、政府の軽視と無理解の農業大国であることに、同相は失望せざるを得なかった。後任人事は農業強化ではなく、連立強化の道具として扱われている。現政権にとって農業は国家繁栄の柱ではなく、政治の道具らしい。
 大統領は後任人事について、農地改革を優先する意向のようだ。農業生産よりも農地改革が労働者党(PT)の至上命題らしい。政権獲得以前から大統領が農地改革を夢に描いていた。生産よりも自分の土地を与えることを優先し、同相とは価値観が違うようだ。
 農地の生産性類別法は、大きく塗り替えられる。農相辞任で生産性の歯止めは外され、MSTの制御弁は除去された。ロセット元農地改革相やハックバルト現農地改革相らは、出番到来と祝杯を挙げた。農相候補のピント氏は往年MSTの旗手であったことを忘れてはならない。
 農相の辞任は、ルーラ大統領の再選にマイナスと思われる。農業生産者団体は国会も含めて、いっせいにアウキミン擁立へ回る。農相辞任はアグリビジネスの埋葬と叫ばれ、この重大性をPTは認識していないらしい。農相の手前、政府批判を控えていた農業生産者団体は、一斉に政府非難の狼煙を上げる。