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族議員の知られざる実態=隠然たる力有す=恩義に厚く党超え結束=一大派閥形成の農業族

2006年6月30日(金)

 【エポカ誌五月十五日号】国会のロビイストつまり族議員が政党をはるかにしのぐ隠然たる力を有しているが、関係者以外はその実態があまり知られていない。十月の総選挙に向けて各党の公認候補が取りざたされている中で、彼らにとって政党は一時的な身の置き場所でしかない。選挙地盤の地元に不利益となる法令や措置に対しては徹底抗戦をすることから、政府にとっては目の上のたんこぶ的存在だ。族議員は歴史的な農業族から、宗教(エヴァンジェリカ)の新興族にまで至るが、その実態を追ってみた。
 国会ロビーとして代表的なのが農業、宗教(エヴァンジェリカ)、銀行、建築、マナウス自由貿易地区などで、単独では効果が表われないが、ひとたびそれぞれが結束すると国会を左右する力を発揮する。それぞれ使命が異なるため、貸し借りの恩義に忠実で結束を容易にしており、政党間の連立よりもはるかに力を発揮する。
 とりわけ農業族議員は群を抜いて一大派閥を形成している。現在下院で一〇三議員(二〇%)上院で五議員(六%)。ほとんどが北部と北東部地方、アマゾン地区の農場主や大地主で占められている。農業国であるブラジルなだけに、歴史的に農業畑から国会議員を輩出したのは当然の結果である。
 しかし族議員として結束を固めたのは一九八六年で、政府が農地改革に着手した時だった。以後は国会の一大勢力に登りつめた。今年の政府予算案の承認を四カ月遅らせる裏舞台を演出したり、ルーラ大統領の意向と裏腹の、政府農業融資の返済を二十五年据え置くとの可決で主役を演じ、族議員の面目を果たした。
 いっぽうでマナウス自由貿易地区(ゾナ・フランカ)擁護族議員は、同地区の工業製品税(IPI)を二〇二三年まで免税とすることと、付加税を一〇年間免除することに成功、ルーラ大統領に黒星をつけた。
 このグループは下院に五十五議員(一一%)、上院に二十一議員で構成されている。リーダー格のグラジオティン下議はルーラ大統領の支持グループの一人で、さらにもう一人のリーダーのヴィルジーリオ下議はカルドーゾ前大統領の閣僚経験者で反ルーラ派だが、おもしろいことにこの免税措置には両者統一行動をとって政府に反対した。
 このほか宗教(エヴァンジェリカ)は教会の普及とともに新興勢力として伸長した。下院で五十五議員(一一%)、上院で三議員(四%)となっている。
 人数的に少ないまでもデルフィン・ネット元蔵相をリーダーとする銀行族も金融政策で幅を利かしている。下院では一議員(〇・二%)だが、上院では二十議員(二五%)で構成されている。
 保健族は下院で二〇一議員(三九%)、上院で十九議員(二三%)と最も多い。銃器所持の是非を問うた国民投票で話題となった銃器族は下院で十二議員(二%)、上院ではゼロとなっている。