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帰伯逃亡デカセギ問題=静岡県人会が協力要請=県連で署名呼びかけ

2006年7月1日(土)

 日伯両国の外相レベルでも話題にのぼり、署名も十万筆を超えた「犯罪人引渡し協定や代理処罰制度確立」を求める運動は、大きな盛り上がりをみせている。その中、また一人、帰伯逃亡ブラジル人がでた(別記事に詳細)。
 ブラジルで署名協力を開始した静岡県人会は、六月二十九日午後から行われたブラジル日本都道府県人会連合会の代表者会議でも提案。松尾治県連会長も各県人会へ協力を呼びかけた。当日は約四十団体から五十人以上が出席した。
 鈴木会長は、静岡県の石川嘉延知事による、全国知事会にもこの問題を提起するとの発言を受け、「他県でも同じことが起きているはず」と説明し、「罪を犯した人がブラジルに逃げてきて安穏な生活を送るような逃げ得は許せない。一人でも多くの人に署名の協力をしてほしい」と呼びかけた。
 二世参加者から危惧する声もあったが、「罪を犯した人は罰せられるべき」「この署名に協力しないと、日本でまっとうに働いているデカセギのイメージまで悪くなるのでは」などと賛同する意見が次々にでた。
 松尾県連会長も「逃亡した人に憤りを感じる。逃げてくることを快く思っていない人が、こちらにもいることを示すために、県連として署名に協力していきましょう」と提案。「義務ではなく各県人会の判断に任せる」としたが、居合わせた多くが賛意を示し用紙を各会に持ち帰った。
 会議には、静岡朝日テレビから取材班が訪れるなど、日本側からの注目の高さをうかがわせた。
 七月末までに各県人会で署名を集め、県連もしくは静岡県人会で取りまとめ、日本に送る予定。
《解説》
ブラジル側も座視せず
署名で動きを後押し

 この動きは、すでに二国間の重要な案件として認識されている。堀村隆彦大使も先の帰任会見で「できるだけ早く交渉を進め、法の裁きを受けるよう措置を講じ、解決すべき問題だと思う」との認識を示した。
 六月十六日、ブラジル人容疑者による死亡自動車事故などの被害者遺族らは麻生太郎外相と面談し、犯罪人引渡し条約や代理処罰制度の確立を要請。遺族らは参議院にも請願を出した。この件に関して、四月の日伯外相会談でもアモリン外相との話題に上っていた。
 さらに、静岡県の石川嘉延知事は六月二十九日、七月五日の全国知事会でもこの問題を提案し、政府や外務省に呼びかける意向を明らかにした。
 日本で「外務、法務、警察の三省庁は、年内にもブラジルとの交渉に入りたい考え」と報道があった。それを裏付けるように、日伯間の刑事司法共助に関連した担当部署の確認や意思疎通のため、警察庁から係官四人が六月十二日に来伯していた。
 ブラジル側でも五月、伯日比較法学会が専門家による討論会を行い、代理処罰を円滑に行うための刑事司法共助の具体的なあり方を検討中だ。九月をめどに法案をまとめ、浜松の北脇保之市長に手渡す予定。同市長を通じて外国人集住都市会議に提案される見通しだ。
 県連が協力するこの署名は、署名用紙にある個別事件に限定された運動ではなく、ブラジル側でも「逃げ得」を座視せず、許さない気持ちが広くあることを示す良い機会となっているようだ。