2006年7月4日(火)
【エスタード・デ・サンパウロ紙三日】下院倫理委員長のリカルド・イザル下議は二日、国会議員の二〇%に当たる一二二人が検察庁によって刑事起訴され、最高裁の審理を受けるため大挙被告人となったことを明らかにした。これほど大量の灰色議員を短期間に輩出し最高裁の詮議を受けるのは、ブラジル議会史上で未曾有の出来事であり、議会の質低下と全公共機関のモラルと品位の欠落だという。告発は連日のように検察庁へ通告され、どれも議員特権を乱用した横領や汚職、違法金融取引、犯罪組織の構築、不正入手、盗品享受、恐喝、公文書偽造、密輸、脱税、資金洗浄などの刑事犯罪である。
検事総長は二〇〇三年六月から〇六年六月までに、下議七十四人と上議三人を刑事犯罪で起訴した。さらに国会議員四十五人に対する刑事訴訟の公式起訴も上がっている。ブラジルの政治は地に落ち、いま頽廃の極にあるといえそうだ。
政府機関の不正取引は、まだ広範囲にわたる。入札の不正手続きや国会議員の麻薬取引関与、社会保障院の不正納付、公共工事の手抜きと資金の横流し、統一保健システム(SUS=公立病院)や学校給食の水増し請求など。
〇五年の議員犯罪調査によると、公共行政の不正と脱税、選挙違反だけで、違法行為の五八・八%を占めた。司法官協会(AMB)のコラッソ会長は、議員特権の弊害を強調。現行法ではずる賢さと完全犯罪だけが評価され、綱紀粛正に配慮する者はいない。例え重罪で立件されなくも、議員の身柄拘束はあって然るべきと同会長はいう。
国会議員法は、国会議員が犯罪を働くように作られたような欠陥法だという。同法は国会議員にとって、司法府の裁判攻撃から身を守る傘とされる。
これまで国会議員の犯罪はサーチライトを照らされるだけで、ウヤムヤになった。イウデブランド元下議を除いて、国会議員の犯罪がどう裁かれるのか注目されている。アクレ州のボスといわれたイウデブランド元下議とジルセウ元下議、コスタ・ネット元下議、バルバーリョ元下議には共通点がある。全員が最高裁の刑事被告人として連座したことだ。
イウデブランド元下議とジルセウ元下議は、議員権をはく奪された。コスタ・ネット元下議は議員を辞職。バルバーリョ元上院議長はパラー州元知事、社会保障院元総裁、北伯開発庁元長官、元下議を歴任し、各所で公金横領の噂が絶えなかった。検察庁の起訴で、数時間だけ見せしめの檻に入れられた。
イウデブランド元下議は退役した軍警大佐であるが、チェーンソーで生身の人間を切り刻んだことで、ブラジル全土を震撼させた。現在は二十五年の禁固刑で服役中である。
ジルセウ元下議は、サント・アンドレ元市長の殺害事件にまで発展した裏金システムという犯罪組織を構築した疑惑で審理中だが、身柄の拘束はなかった。
今回は議員らが最高裁の白洲に引き出され、裁きを受けるらしい。しかし、ジルセウ元下議もバルバーリョ元下議も、全てラランジャ(名義賃貸人)を使ったため証拠物件は一切ない。証拠がなければ無罪放免になるのか、国民が注目している。