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ブラジルの夢、露と消える=ラテンアメリカ統合はお預け

2006年7月5日(水)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十五日】ルーベンス・リクペロ大使は記者会見で、ブラジルがラテンアメリカ統合に掛けた夢ははかなく消えたと慨嘆した。ラテンアメリカ共同体結成の鍵は、お互い同士の信用と同大使は思っていたようだ。
 モラレス・ボリビア大統領のブラジルへの敵意ともとれる対応で、双方の信用は失われた。チャベス大統領はベネズエラ石油公団の技術陣を送り、ペトロブラスの空席を埋めた。チャベス・モラレスの知能犯がこれから何を仕出かすかが心配という。
 コケ脅しと軽率な決断のツケは大きい。これからブラジル・ボリビア両国の外交関係に重くのしかかる。ブラジルは、煽動的な政治理念や見え透いた理想主義を信じてはいけない。一朝一夕に経済が好転するような詭弁を使う者を信じてはいけない。
 チャベス大統領提唱の大西洋共同市場(ALBA)は、米州自由貿易圏(FTAA)に代替するものというふれ込みだが、海とも山ともつかない化け物みたいなもの。思いつきや支援者のいない構想は空想であり、取るに足らないと同大使は警告した。
 ブラジルは、水や風がエネルギーとなって支配するという万有引力の法則に従うべきである。現行の政治も経済も、まず既存の状態で受け入れ、次に理想の形へ改革するべきだ。既存の状態とはブラジルやメキシコ、アルゼンチン、チリの間で合意されたラテンアメリカの形である。
 ベネズエラやボリビアはいきなり既存の形を叩き壊し、妄想のラテンアメリカ共同体をつくるというのだ。このゲームは遅かれ早かれ王様や女王様、法王様が生まれ、農民や市民らが反乱を起こす。
 チャベス大統領やモラレス大統領は左翼政治家ではない。その生い立ちを見ると、チリやブラジル、ウルグアイにとって左翼の風上にも置けない輩であると思われる。公金を貧しい人にバラまいただけの迎合主義者である。
 チャベス大統領の力は、原油暴騰に乗った幸運であって実力ではない。モラレス大統領は農民一揆の頭目に過ぎない。左翼思想などなく、コカ栽培で生計を立てる社会疎外者だ。モラレス大統領はボリビア以外の国では一市民として扱われない人物だ。
 ブラジルは過剰反応をする国と外国から見られている。国益や責任感、反帝国主義などに対し必要以上に過剰反応する。それは隣国のような小国がすることで、ブラジルのような大国がすることではない。
 結論からいうならチャベス・モラレス連合は、狂信といえそうだ。狂信には根拠がないし、長続きもしない。アンデス山脈の山賊は、山間の貧乏人を集めて金をばらまくと約束したのだ。金の使い方も分らない無法者が破産するのも時間の問題である。
 しかし、ラテンアメリカ共同体の夢は、永久に消えたわけではない。長い歴史に裏打ちされた悲願であって、唐突な思想の上にできたものではない。これまでラテンアメリカの一国が経済危機に陥ると周辺国が手を差しのべ助けた。一人独力で、地獄から抜け出した国はない。