2006年7月8日(土)
ブラジル日本商工会議所(田中信会頭)の定例昼食会が六月二十一日、サンパウロ市のマックソードホテルで開かれ、元サンパウロ州財務長官でFGV(ゼツリオ・バルガス基金)大学院長のヨシアキ・ナカノ氏が講演した。この日は、帰国令の出された堀村隆彦駐伯大使が離任のあいさつをしたほか、パラナ州マリンガ市のシルビオ・マガリャンエス市長も訪れ、日本移民百周年を記念して同市で進められている日本庭園の計画を紹介した。
商議所昼食会では三度目の講演となるナカノ氏は今回、「持続的成長のための新為替政策」と題してブラジルの経済政策の現状を解説した。
ブラジル経済の現状について「窒息寸前」と表現するナカノ氏。良好に見える現在の状態は世界の景気状況に便乗したものであるとの見方を示すとともに、中国やインドなど他のBrics諸国と比べ経済成長率が低い点、外国の経済危機に影響されやすい経済構造など問題点を挙げた。
ブラジルでは、他国の経済危機によってレアルが上がり、インフレ懸念が高まると、金利を上げてインフレを抑える手法が取られる。この高金利が、設備投資の伸び悩みや公的債務の上昇につながっている。ナカノ氏は、金利を下げて政府の公共支出を減らし、民間の設備投資を延ばすことが必要と述べた。
あわせて減税の必要性も強調。為替レートについても、レアル高が製造業の海外移転につながり、国内産業の空洞化、失業者の増加をもたらすと指摘した。ナカノ氏は、国際的な競争力をもつ新しい為替政策の必要性を訴えるとともに、十年先を見た構造改革が持続的な成長を可能にすると考えを語った。
この日は、帰国令の出された堀村隆彦大使が出席して離任のあいさつを述べた。
日伯両首脳の往来や、最近ではデジタルTVの日本方式採用に向けた調整など、重要な職務を数多くこなした堀村大使は、「停滞気味の両国関係に新風を吹き込んだ」と首脳往来の成果を強調。
あわせて、任期中に国内各地で実施した経済セミナーについて、開催にあたっての商議所の協力に謝意をあらわした。
ブラジル側関係者と接する中で「彼らの日本に対する信頼感、期待を感じた」と堀村大使。「日系移民百年の努力、貢献は常に彼らの頭の中にある」と語り、将来の両国関係について「ブラジルの熱い思いをどう受けとめていくかが、飛躍の鍵を握るでしょう」と言葉を贈った。
マガリャンエス・マリンガ市長とともに、この日はパラナの西森ルイス州議も同席。先日同市で定礎式が行われた日本庭園の計画概要を紹介するビデオが流された。
このほか、任期を終え帰国するブラジル日清紡の今井達男社長、ブラジル日本通運の平野候一社長が帰国あいさつした。