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メルコスルに忍び寄る危機=チャベス同盟で伯は孤立?

2006年7月12日(水)

 【エスタード・デ・サンパウロ紙六月二十九日】ブラジルはまたエネルギー問題で悩まされそうだ。パラグアイ政府は二十八日、イタイプー発電所を建設するとき受け取ったパラグアイ側の株券三〇億ドルを、ベネズエラ政府に売る意向を表明した。ベネズエラが正式にメルコスル入りをする七月、パラグアイ政府は正式に提案するらしい。
 それが実行されるなら、パラグアイもチャベス大統領の軍門に下ることになりそうだ。同大統領は、ボリビアのガスに口を出したようにイタイプー発電所にも干渉する。つまらない民族意識を炊きつける。
 これまでイタイプー発電所は、ブラジル・パラグアイの共同事業と思っていたが、事態は急変する。チャベス大統領は国際金融に図ることなく、アルゼンチンの国債を購入した。またボリビアの狂犬を唆して、ブラジルに噛み付かせた。ボリビアのガスでブラジルは煮え湯を呑まされている。今度はメルコスルを使って、暴れん坊は何かを仕出かすか。
 イタイプー発電所は、ブラジルが出資したから完成した発電所である。パラグアイは川岸を提供しただけで、発電所の共同所有者になった。そしてパラグアイ分の電気エネルギーをブラジルへ売っている。電気料金は両国の合意価格だが、チャベスがボリビアのようにパラグアイを唆したら事情は違う。
 パラグアイ大統領の意向では、イタイプー発電所にチャベスを引き込み、ボリビアのように一波乱を起こす考えだ。パラグアイとベネズエラの取引はまだ正式に話し合われてはいないが、狼煙は上がった。
 ボリビアのガス価格問題は係争中であるが、モラレス大統領はブラジル人農業生産者の強制立ち退きで脅しをかけてきた。ブラジルは南米の帝国主義者だという。因縁をつければ何でもできるものだ。
 アルゼンチンでは、ブラジルが譲歩の連続である。ブラジルは侵略者らしい。メルコスルは、ヒヨコに毛が生えたような状態である。ブラジルは二十六日、アルゼンチンとの自動車協定を無期延期にさせられ、屈辱的合意を結んだ。
 何故、このような結果になるのか。これは、第三世界を標榜する安物の理想政治の結果ではないか。当事者は詭弁を使って、もっともらしく説明する。しかし、事実は否定できない。これらの不具合がメルコスルを崩壊させる。こんな調子で関税協定を締結して、市場開放ができるのか。
 メルコスルはこれから、チャベス大統領を中心とするボリビアとアルゼンチン、パラグアイ同盟に配慮しなければならない。チャベス大統領の口車戦術に対抗するため、ブラジルは対米接近の通商で優先事項を決めること。それに成功すれば、外資導入とサービスの対米輸出は可能だ。
 ルーラ大統領が再選されるなら、PT外交は継続される。裸の王様はいい気なものだ。PT政権の輸出実績は、前政権で播いた種を収穫したもの。ほとんどの分野で貿易黒字を出したが、特にレアル高の原因となったのは農産物であった。だから巨額の外債を決済することができたのだ。
 経済的独立を遂げたのも、そのお陰である。しかし本当の健全財政は、政府経費のコントロール如何にかかっている。最近の浪費体質と大統領選の大判振舞い位の気持ちで台所を預かっていたら、遠からずブラジル経済はヒビが入って崩れる。