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コラム 樹海

 今月六日付け静岡新聞には、ブラジル国籍の暴力団組員による覚せい剤密売を摘発との記事が掲載された。「指定暴力団山口組系組員の容疑者(33)」とだけ記されており、名前は書かれていない。「容疑者は県警が把握している県内ただ一人のブラジル国籍の暴力団組員」だという▼一九九一年二月ごろ日本に入国し、二〇〇二年に群馬県から静岡県に移り住んだ。昨年、静岡県警が山口組系の暴力団組員として〃認定〃した。デカセギブームの真っ最中に十八歳で訪日した計算になる。きっと日本に大きな希望を抱いていたに違いない。新しい人生がそこにはあると。群馬県には大泉町などのブラジル人密集地があり、最初はちゃんと働いていたのだろう。でも、どこかで道を踏み外してしまった▼中途入学した日本の小中学校で授業についていけず、落ちこぼれて、暴走族へ入ったデカセギ子弟は多いと聞く。おそらく暴力団員は少ないだろうが、その予備軍である「不良」「チンピラ」は山ほどいるとも。彼らが日本の裏社会に組み込まれる前に、なんとかまっとうな道に戻す方法はないものか▼「静岡県警初のブラジル人暴力団員認定」とは、もし日本にサンパウロ人文科学研究所みたいな組織があり、同様に『移民史年表』を発行していれば、掲載されそうな〃初〃事件だ。それが暴力団というのは実に悲しい。また静岡県以外では、すでにいたかもしれないので、日本初ではないかもしれない▼デカセギという人流は、在日ブラジル人三十万人という巨大な動きに育った。しかし、百周年を前に、両国間に課題は多いと改めて感じた。(深)

06/07/13