2006年7月14日(金)
【フォーリャ・デ・サンパウロ紙十三日】犯罪組織州都第一コマンド(PCC)は十一日夜から十二日にかけて、再びサンパウロ州三十九都市の警察署など七十三カ所を襲撃した。これまでに警察官や警備員など八人の犠牲者を出した。三人は身元不明だ。他に軍警施設や市警本部、州議会施設、裁判所、銀行支店、スーパー、商店、路線バス約一〇〇台などが被害を受けた。サンパウロ州保安局のアブレウ長官は、PCC幹部のパラナ州移送やアララクアラ刑務所とイチラピーナ刑務所で受刑者に野宿を強いたことへの報復と認識し、脅しには屈しないとの声明を発表した。
前回から二カ月の休戦後、刑務所内の総司令部で襲撃作戦の指揮を執ったPCCメンバーは、受刑者に対する虐待や拷問へ抗議するチラシを配布した。襲撃はPCC幹部の移送を阻止する目的であったようだ。パラナ州カタンドゥーバ刑務所へ幹部四十人を移送する計画が洩れたため、PCCを刺激したとみられている。
治安当局は、PCCの襲撃指令を盗聴によりフランコ・ダ・ロッシャ少年院収容者の携帯電話から事前にキャッチしていた。治安当局への襲撃の効果が予想以下だったことで、PCCは戦略を変更し、民間施設をも攻撃目標に入れた社会かく乱を狙ったようだ。
事前にキャッチしたとはいえ、被害は大きかった。路線バス約一〇〇台とスーパー二カ所、銀行十二支店、自動車代理店一カ所、電子機器販売店が襲撃された。ノーヴァ・カショエリニャ区では十一日、ロレンジ軍警が自宅で呼び鈴に応え、ドアを開けた途端に射殺された。犯行現場を目撃した姉も射殺された。
悪循環を繰り返すブラジルの犯罪対策について、NGO(非政府団体)が日常茶飯事となっている刑務所の拷問に言及した。NGOは連日、受刑者の留守家族から刑務所内の虐待と見せしめの陵辱で陳情を受けているという。NGO会長で弁護士のヴァスシアヴェオ氏がPCCボスのマルコーラに掛け合い、待遇改善を条件に前回は襲撃を中止させた。
しかし、その後当局は約束を全く無視した。受刑者は裏切られたと思っている。一部の刑務所は拷問を止めたが、拷問後の治療は全ての刑務所で一切ない。噂では、リベイロン・プレット刑務所の拷問が最も酷いらしい。モジ・ダス・クルゼス刑務所は拷問中止を条件に暴動を中止したが、刑務所側は約束を破って拷問を続行しているという。
ルーラ大統領は、サンパウロ州政府が連邦政府の治安部隊派遣を拒否したことを批判した。サンパウロ州はパニック状態にあるのに、事実を否定する政府は手の施しようがないと冷笑。アブレウ保安長官が、大統領はありもしない治安部隊を派遣すると口先の援助を非難した。本当に支援する気持ちがあるのなら、直ちに予算を交付するよう要求した。
レンボサンパウロ州知事は、ルーラ大統領がPCC事件を政治的に利用していると非難した。ボウンハウゼン党首は、サントアンドレ前市長殺害で犯罪組織とつながりがある労働者党(PT)のことだから、PCCとつながっていても不思議ではないと述べた。アウキミン前知事は、治安対策予算を直ちに交付するか、連邦刑務所へPCCメンバーを引き取って貰うことが援助だと皮肉った。