2006年7月18日付け
【フォーリャ、デ、サンパウロ紙十七日】米下院は十四日、ブラジル、パラグアイ、アルゼンチンの国境隣接地帯に米軍特殊部隊を投入し、テロ防止作戦を展開するため、当事国憲法による承認をブッシュ米大統領が要請する法令を可決した。同令上程者のイレアナ・ロスレチネン下議によれば、六月七日に米軍によって殺害されたアルカイダの指導者ザルカウイ氏が、テロリストは米国入りをするためにブラジル経由ルートを使うよう指示していたことを明らかにした。フォース・ド・イグアス市の政治家や団体代表は、米下院による当地における軍事行動要請を国家主権の侵害であると拒絶の意向を表明した。
頻発する欧米のテロ爆破事件で、ブラジルの国境隣接地帯がテロの拠点になっているという見方が強まってきたらしい。米下院はテロ防止策として米州機構(0AS)加盟国がヒズボラとハマスをテロ組織であると認めるため圧力を掛けることも、ブッシュ米大統領に要請した。
両要請の標的が、外国人の活動に寛容なブラジルであることは明白である。OASの重要メンバーであるブラジルとしては、国境隣接地帯をテロ活動の舞台に提供しているかのような米政府の見方を、外務省は容認しないと言明した。単なる容疑者が出入国しただけで、テロ加担とは無関係であるという。
下院の同令承認報告は、在米ブラジル大使館にとって不合理極まりないもの。もしも、上院でも可決されるなら伯米両国の友好関係を傷つけるものであると、外務省は通告した。
同令上程者は、テロリストがブラジル経由でメキシコ入りし、陸路米国へ侵入するのが通常ルートであると下院で説明した。ブラジルルートの根拠について伯米間の公式文書を求め、マイアミ市の同下議事務所をフォーリャ紙記者が訪れた。しかし、文書でのみ応対すると拒絶。
そのため文書による質問三カ条を提出。一、なぜ、いまテロ防止の軍事作戦なのか。証拠書類を以って説明せよ。二、ザルカウイ氏がブラジルルートを使用せよといった根拠の提示。三、同下議の告発が伯米関係に悪い影響を及ぼすことを恐れない理由は何か。要求に従ったが、それでも同下議は応対を拒否した。
ブラジルが南米の政治紛争に加担しているという告発は初めてではない。キューバの保守過激派の後押しをしているのも、ブラジルと疑われた。ベネズエラの二〇〇二年のクーデターにブラジルが一枚噛んでいるという。
在米ブラジル大使館のアブデヌル大使は、同令の承認を遺憾とする公文書を米外務省へ提出した。上程案はホワイトハウスも関知しない内容で、現地にテロ活動の形跡は一切ないとした。米中央情報局(CIA)は3プラス1グループ協定により、かかる告発には証拠提示の義務があると訴えた。
フォース・ド・イグアス市のパウロ・ジジ市長が、同地域に対する米国の偏見には率先して抗議運動を起こすと声明を発表した。当市からレバノンへの送金は、ニューヨークやロスからの送金に較べたら微々たるもの、根拠もないことでテロの加担呼ばりは心外であると糾弾した。
国境隣接地帯には一万二〇〇〇人のアラビア人と二世が住んでいる。しかし、純朴で真面目な市民ばかりで、アラブ即テロというのは偏見と濡れ衣だという。