【エスタード・デ・サンパウロ紙二十一日】ヴァリグ航空の競売は二十日、唯一の入札企業ヴァリグログが二四〇〇万ドルで落札と決定した。かつての軒下の借家人が、母屋を購入することになった。ヴァリグログは一週間、リオ―サンパウロ間を除く全ての国内・国際便を運休すると発表。ドル箱の同区間は定期便を従来の一日十便から三十六便へ増便し、集中的にてこ入れする方針を打ち出した。既に販売済みのヴァリグ航空券は、他社に便宜をはかるよう依頼することにした。ヴァリグログは二十八日に五億ドルの緊急投資を行い、徐々に事態回復に向け運行調整を行うと発表した。
ヴァリグ航空を落札したアエレオスの親会社ヴァリグログの代表は、中国人のラップ・W・チャン氏。同氏が経営に参加する企業は、十二月にヴァリグログを買収したばかりであった。アエレオスはブラジルの旅客空輸許可証を持っていないので、旧社名義で許可取得まで営業する。
二十四日にヴァリグ航空は明け渡され、八〇〇〇人のリストラと新経営陣が発表される。旧ヴァリグの債務七九億レアルに対する一〇年割賦契約書も手交される。死んだはずのヴァリグは、新ヴァリグとなって蘇生する。新ヴァリグは九月末に一六八〇人を新採用し、十五機を就航する。
新ヴァリグは一年後、現在の十三機を三十機に増やす予定。従業員は一機につき整備員も含め一一〇人が就労する。満身創痍の新ヴァリグは、まだ問題が山積だ。まずスタッフのモラル向上から始める。
新ヴァリグは、旧ヴァリグのシンボルを無償譲渡される。傘下リオスールを含め二社の全航路とコンゴーニャス―ポルトセグーロの航路、小型機二機を持ち年商一五〇〇レアルのチャーター社も譲渡される。
この買い物は、いくらについたのか。落札価格は二四〇〇万ドルだが、実質的には概算で五億ドルとみられる。手術に失敗した患者のように、いつまた何が原因で発病するか分からない。落札もまだ海とも山とも分からない。管財人アヨブ判事のもとには、債権者の電話が絶えない。
米国の航空機リース会社は、一斉に航空機の返還要求訴訟を起こした。リース代金は払わない。物件は返さない。債権回収の見込みはない。差し押さえを恐れて米領土内へ飛ばない。落札により裁判所の資産管理から離れたので、リース会社には不利となった。
ヴァリグ買収は、中国人チャン氏の夢だったらしい。チャン氏は最近、ブラジルのアングラ・ドス・レイスに常駐し、ポ語は流暢である。ヴァリグの定期総会や債権者会議、労組会議にはいつも出席する。Tシャツとジーンズの軽装で気さくな人物だ。
ヴァリグ売却のドラマはまだ続編があるらしい。正体不明のヴォーロが落札会社ヴァリグログを購入したことで、航空会社協会が民間航空管理局へ落札取り消しを訴えている。ヴォーロのブラジル人経営者はラランジャ(名義賃貸人)だという。
ブラジルには軍政時代、制定した民間航空法があり、航空会社の資本金の二〇%以上を外国人が所有することを禁じている。航空法によれば民間の営業する空輸といえども、空軍活動の一環とみなされ、非常時には軍事行動に狩り出されることがある。
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