【エスタード・デ・サンパウロ紙二十五日】長期にわたり難航した世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)は二十四日、ルーラ政権が通商政策で最大の賭けに出た渾身の努力も空しく、決裂した。国連のアナン事務総長も交渉の成功を後押ししたが、WTOの政治力不足をアモリン外相が咎めた。これでルーラ政権の国際通商政策と外交政策は、何ら成果を得ることなく第一期政権を閉じることになりそうだ。二〇〇一年に始まったドーハ・ラウンドは、ついに最終決着がつかず無期限の閉幕に至った。ラミー議長が新多角的貿易交渉は座礁と公式宣言をした。
ドーハ・ラウンド決裂の原因は、農業補助金で米政府の譲歩が不十分というもの。途上国の非難が米国へ集中した。年内決着の望みは絶たれ、三年位を経ないと再開の気運も盛り上がらないとみられる。多国間貿易システムの交渉決裂はWTO開設以来で、WTOの存在意義が問われる危機にあるといえそうだ。
ルーラ政権にとってメルコスル対EU交渉も米州自由貿易圏(FTAA)も虻蜂取らずとなり、新多角的貿易交渉はWTOへの足掛かりを失ったことになる。政府は通商政策で全ての重心をドーハ・ラウンドに掛けていたので、交渉決裂は政府を支えた大切な柱の一本が折れたようなもの。
ドーハ・ラウンドは、ブラジル経済今後十年の命運が掛かっていた。世銀の計算によれば、同交渉の成功はさらに二八〇〇億ドルの国際貿易をもたらし、三分の一は途上国を潤すものであった。ロシアの音頭でドーハ・ラウンドの救済に向け二十三日、ブラジルや日米欧六カ国代表が、善後策を協議した。
事態を放置するなら、国際司法裁判所に提訴する貿易紛争が激増すると思われる。WTOで解決できないなら、残された唯一の道は国際司法裁しかない。ブラジルは綿提訴で米国に勝訴したが、効力がないことで国際司法裁の決着を希望していたところだ。米国代表は、受けて立つと覚悟の程を見せた。WTOがダメなら、不穏な力の対決ということらしい。
WTOが存亡の危機を迎えたのは、初めてではない。ウルグアイ・ラウンドが五年目を迎えた一九九〇年、引っ掛かったのは農業補助金、元凶は米国で今回同様であった。事態を収拾したのはダンケルWTO専務理事。ダンケル・プロジェクトを強引に呑ませ、同理事は辞任した。
反省会が行われたが、水掛け論に終わった。アモリン外相は元凶を米国内の農業補助金とし、親鬼を退治すれば子鬼は消散すると見解を述べた。外相は無期限閉会に終わったことで、これまでの交渉結果が全て振り出しに戻る可能性があると懸念した。
ドーハ・ラウンド決裂がもたらす今後の影響について、資本主義の崩壊可能性も包含する重大な結末を誰も口にできなかった。まずはWTO加盟各国が、交渉決裂の政治的及び経済的代価を払わされる。WTOの消滅もあり得るので、その代価はどんな形で償うかが問われる。解決の鍵は米国の総選挙とみられ、ドーハ・ラウンドが必要なら時間が解決するという見方もある。
ドーハ・ラウンドが決裂=無期限交渉中断へ=ルーラ政権最大の賭け空しく=元凶は米国の農業補助金
2006年7月26日付け