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米上院=伯・印両国を恫喝=ドーハで非協力的=通商特恵国からも除外=こけおどしと伯外務省

2006年7月29日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙二十八日】米上院は二十七日、ブラジルとインドを米国の友好国から外し、通商特恵国からも除外する意向を表明した。排除理由の一つは、二カ国が世界貿易機関(WTO)の新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)で米国に対して非協力的であったからだという。恫喝動議は、米上院財政委員会のグレスレイ委員長が行ったもの。米大統領選に向けた政治発言のこけおどしと、イタマラチ宮(伯外務省)はみている。もしも発言のような事態になれば、黙って見てはいないとブラジル政府は強硬姿勢を示した。
 米政府のスーザン・シュワブ通商代表が二十八日、ドーハ・ラウンドの米側見解の説明で来伯した。その一方で、米上院の財務委員長が援護射撃を行ったようだ。米式外交手法である。世界最大の消費市場から、ブラジルを村八分にするというのだ。
 通商特恵法は、米経済に貢献する国へ低率関税を課したり、開発途上国への関税を免除するもの。米上院財務委員長によれば、ブラジルとインドはドーハ・ラウンドの邪魔者だという。米国に対し非友好的な国へ、特恵待遇を与える理由はないと述べた。
 米政府は全輸入の二%を、特恵待遇に充当する。ブラジルは二〇〇五年、対米資本財輸出の一五%が特恵待遇とされ、金額にして二四四億ドルに上った。米通商特恵法は定期的に更新される。次回更新は〇六年十二月になる。その時にはブラジルを外すという。
 ブラジルが通商特恵で批判されたことは、再々あった。ブラジルは海賊版王国だといい、次は知的所有権を守らない国と告発。
 アモリン外相が財務委員長発言に関係なく、米通商代表との連絡会議は忌憚なく意思の疎通があったと述べた。予定テーマは二国間協議であったが、ブラジルとインドはWTOの邪魔者ではなく、誤解が生んだ結果として協議に入った。
 ブラジルが邪魔者であるなら、米通商代表がブラジルを訪れる理由はない。報復発言は、農業ロビーが政治の鍵を握る米国で、ブラジルを悪者に仕立て農業保護政策を看板にする効果があるためだ。グレスレイ上議は農業州のアイオワ州出身だから、ブラジル報復で格好をつけたもの。
 通商特恵二%は、特恵国から外されても損害は軽微。ブラジルは過去に何度も特恵除外の脅迫を受けたが、何も起きなかった。米国の恫喝外交は慣れたものだ。議会の恫喝とホワイト・ハウスの脅迫は危険の度合いが違う。そんなものにうろたえていては、米外交はできない。
 WTO加盟国の一四九カ国は二十七日、五年にわたって悪戦を繰り広げたドーハ・ラウンドに無期延期の閉幕宣言を行った。ラミーWTO専務理事は、決裂の責任を特定の国へ転嫁しないよう懇願した。食糧は各国の安全保障に関わる問題で、WTO開設以来最大の難問だと述べた。
 米通商代表が、ドーハ・ラウンドは難航したが死滅ではないと、〇八年再開の可能性打診の意向を表明した。ブラジル訪問は、米議会対策やインドの市場開放に、ブラジルの協力を取り付ける目的という。