【ヴェージャ・サンパウロ誌二日号】悪徳警官の手本ともいえる警察署長が数々の不正行為で連邦警察に逮捕された。そもそもは空港税関での不正通関の汚職首謀者として検挙されたが、その後の調べで余罪が明るみにでて、犯罪組織の結成、脱税、職権乱用、外国での不法口座設置ならびに不法送金、武器不法所持の罪に問われる。この署長は市民警察内でもエリートコースを歩み、ABC地区の署長から始まり、本部内でも要職を歴任した。超高級マンションに住み、高級紳士服やアクセサリーに身を包み、社交界ではプレイボーイ然としていた。四十二歳で史上最年少のサンパウロ州署長協会の会長に就任、権力を欲しいままにしてきたが、ついに悪運が尽きた。
そもそも不正が明るみにでる発端となったのは、連警がサンパウロ州カンピーナス市のビラコッポス空港税関内で不正通関を行い賄賂をせしめている組織を突き止め、内偵の末に複数の犯人を検挙した。この首謀者が当の悪徳警官のアンドレー・ディ・リッシオ署長だった。
連警のその後の捜査によると、同署長は空港に限らず、サントス港内にも組織を結成し、密輸入品や不正商品の通関に便宜を計っていた。同署長は月額五万レアルの賄賂のほか、一件ごとに成功報酬の歩合制で収入を得ていた。
逮捕にともない家宅捜査した連警は二度ビックリ。住宅は高級住宅街モルンビー区の時価一〇〇万レアルのマンション。車庫には三〇万レアル相当の二台のジャガー車、一個三万レアル相当の腕時計ロレックスが四個発見された。さらにスーパーの二つの買い物袋に貴金属類と現金三万レアル、マイアミ銀行の自身の口座に二万ドルずつ振り込む指示書が二通見つかった。
家族は妻(同じく警察署長)と四カ月の娘。署長の給与は七〇〇〇レアル。ジャルジン区の高級レストランあたりではプレイボーイ署長と呼ばれていた。同署長はABC地区の署長を歴任し、同地区内での権力を強めた。さらに司法試験にパスし、市民警察本部の総務を担当、武器や弾薬の購買の責任者になっていたこともある。連警ではこの時期に汚職を始めたとみて追及している。
サンパウロ州署長協会の会長の選挙では、署長の初任給が全国で一番安い三〇〇〇レアルであることを指摘、これを改善することを公約した。また検察が警官の捜査権を持っていることに反発、法改正を唱えた。これらが賛同を呼び、会長に就任した。関係者は、この二点は署長自身の金と権力のステイタスシンボルだと指摘している。
会長に就任したことで知名度が高まり、検挙された市民や企業から通報があると、捜査を担当している刑事に直接電話して免じるよう指示していた。当然見返りに謝礼金を懐にしていた。
一昔前、税関吏は賄賂で城が建つと言われたが、最近は粛清され、この種の犯罪は消滅したと思われていただけに、現職の署長が首謀者だったことも合わせ、警察関係者は驚きを隠せないでいる。逮捕された悪徳署長は犯行を否認し、仮釈放の申請をした。今後の検察との攻防が注目されている。
悪運尽きた悪徳警察署長=不正通関で私腹肥やす=史上最年少で署長協会会長=要職歴任エリートの蹉跌
2006年8月4日付け