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県人移住史を県民に=鳥取から調査、取材に来伯

2006年8月5日付け

 ブラジルへの県人移住を県民に――。鳥取県からの移住の歴史をたどるためこのほど、同県から「鳥取県中南米移住史」編纂委員会(安藤文雄委員長)委員の小山富見男さん(54)と、県広報誌「鳥取NOW」の作家・山崎秀幸さん(43)が来伯した。
 二人は先月二十二日の第二アリアンサ入植八十周年式典に出席した鳥取県訪問団に同行して来伯。今月二日まで滞在し、各地で取材を行った。
 鳥取県の事業として九八年ごろから始まった移住史の編纂。委員の小山さんは他の委員などと三回にわたって来伯。資料調査に加え、サンパウロ、パラナや第二アリアンサ移住地、アマゾン地域まで足を運び、県人移住者・家族の聞き取り調査などを行ってきた。
 小山さんによれば、鳥取県人の移住は、明治維新以降、まず福島や北海道など国内への移住から始まったという。
 ブラジルへは戦前戦後で約二千二百人が移住した。中でも小山さんは、鳥取海外協会が関わった第二アリアンサの建設を「特筆すべきこと」と話す。今回は、第二の八十周年を収録する目的もあり、個人で訪問団に加わった。「移住者の思いを県民に伝えたい」と思いを語る。
 同移住史はハワイから北米、中南米にいたる県人移住史をたどる内容で、四百ページ程度になる見通しだ。「研究もありますが、読む人に感動を与えるものになるよう心がけたい」という小山さん。「ぜひブラジル日本移民百周年式典にもっていきたい」と意気込みを語った。
 「鳥取NOW」の山崎さんは、このたび同誌で県人のブラジル移住を扱うことになり、初めて来伯した。鳥取県が広報誌でブラジル移住を扱うのは初めてのこと。小山さんの活動に知り合ったことに加え、同誌に掲載された国内の県人移住についての記事を読んだ西谷博・ブラジル鳥取県人会名誉会長が来伯を提案し、実現したという。
 同誌の編集に十一年間携わっているという山崎さん。「移住のマイナス面だけでとらえるのではなく、プラスの評価はないものか」と、ブラジルでの取材に向けた姿勢を話す。
 アリアンサで取材中のところを訪ねた。「二世も高齢化し、三世になると日本との接触が少なくなってくる。移住時の経験がある人たちが存命のうちに話を聞いておきたい」と語る山崎さんは、「残った人から見れば、移住者は『すごいことをした』人たち。取材を通して当時の人たちの気持ちや強さに触れたい」と話していた。
 二人は滞在中、ベレンやトメ・アスー移住地など北伯地域でも取材を行い、二日に帰国した。