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新旧揺れ動くブラジル=両足を未来に向けて歩め

2006年8月9日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙三十日】サンクトペテルブルグのG8サミットは、メルコスル(南米南部共同市場)首脳会議にカストロ議長を招いたことでラテンアメリカが旧時代へ逆戻りしたと評したことを、エコノミスト誌が報じた。メルコスルには頭痛の種になると皮肉った。
 メルコスル首脳会議は低所得層を救済するため輸入代替産業を興し、広範囲に公社を設立して産業を興す考えだと同誌はいう。ブラジルやメキシコ、コロンビアは、チリやウルグアイ、コスタリカ型民主主義をとる。一方、ベネズエラはポプリズムで民主主義の後退を招き、ボリビアは粗末な社会主義のまねをして道化者になる。
 ブラジルの過去の亡霊が、アルゼンチンではまだ生きている。インフレ退治のために政府は数々の介入を実施している。ブラジルは同時期、市場の需要に合わせ基本金利と為替相場を設定できるようになった。ブラジルとチリの経済は、ラテンアメリカのよい手本となりそうだ。
 ブラジルは十六、十七世紀には米国やカナダよりも豊かな国で、理想的国家と崇められていた。それはポルトガルの開拓者が銀を産出し、続いて砂糖産業を興したからだ。大量の労働力を必要としたブラジルは、奴隷を導入した。当時の米国は、英国や仏国、オランダの開拓者が試行錯誤していた。皮革や魚、木材を生産し、人々の空腹を満たすにも苦労していた。
 十八世紀末から風向きが変わった。民主主義の精神が発達し、自由貿易という考えが所有権の保障や契約の順守、フェアな競争精神を鼓舞するようになった。続いて信用取引や先物取引などが生まれ、経済成長の要素を成した。さらに投資の奨励環境が出来上がり、能率とイノベーションが重んじられ、資本主義の時代が到来した。
 ブラジルは現在、十九世紀から二十世紀の過渡期にある。片足を市場経済に置き、もう片足をラテンアメリカの旧時代に置いている。未来を見つめて布石しながら、もう一方で時代遅れのイデオロギーにこだわる。ルーラ政権は近代的なマクロ経済政策を打ち出しながら、一方で農地占拠運動(MST)などを支援したり、数々のアナクロニズムに迷ったりしている。
 ラテンアメリカを見渡すなら、メキシコもブラジルの水準にあるといえそうだ。もっとも成長したのはチリ、続いてウルグアイもよい。ペルーは、ガルシア第一期政権でやった失政を繰り返さなければ進歩する。ベネズエラとボリビアは過去の愚を繰り返す。アルゼンチンはペロンの呪縛に囚われている。
 ブラジルは右足で前進し、左足で後退するのかとエコノミスト誌は報じた。チリのように二本足とも、未来に向けて歩くべきだ。メルコスル首脳会議は、第三世界の構築という懐かしのメロディーを奏でていた。ルーラ大統領は、それほど古い時代が気にいっていたのか。