ニッケイ新聞 2006年8月11日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十日】今年の都市物価高ランキングで、サンパウロ市が四二位、リオデジャネイロ市が四三位と並び、昨年のそれぞれ五一位、五七位から世界で最高のランク上昇率を見せて、一年間で物価が一気にはね上がったことを示した。
大手銀行の中でも七万人の行員を抱え、世界五〇カ国に支店を構える世界有数のUBS銀行が七一カ国を対象に調査・比較してランクを設定した。同行のアナリストによると、ブラジル主要二都市の物価高騰の最大の原因はドル安レアル高によるもので、通貨切り上げ幅は六〇%に達したと指摘している。
調査は比較を容易にするため、すべてドル換算された。所得は一四種類の職業に分けてその平均を算出した。それによるとサンパウロ市は一時間当たり五・六〇ドルで、リオ市は四・二〇ドルだった。これは北京(中国)の二ドル、ニューデリー(インド)の一・四〇ドルを上回っているものの、コペンハーゲン(デンマーク)の二六・九〇ドル、ジュネーブ(スイス)の二五・二〇ドルにはるかに及ばない。
所得は発展途上国と先進国との格差が大きく、例を挙げると、小学校の教師の平均給与はサンパウロ市で年間六四〇〇ドルに対し、チューリッヒ(スイス)では七万二一〇〇ドル。バスの運転手はサンパウロ市で五九〇〇ドルに対し、ニューヨーク市では四万七〇〇〇ドル。建築人夫はサンパウロ市で四〇〇〇ドルと、ニューヨーク市の一割となっている。しかし知識層は格差が縮小、高度の技術者はサンパウロ市で二万七〇〇〇ドル、ニューヨーク市では八万五〇〇〇ドルとなっている。これを受けて所得ランキングではサンパウロ市が四三位で、ヨハネスブルク(南ア)、イスタンブール(トルコ)、ソウル(韓国)を下回った。リオ市は五〇位でモスクワ(ロシア)、ブタペスト(ハンガリー)の後塵を拝している。
世界ランキングのワースト5は一位がオスロ(ノルウェー)、以下順にロンドン、コペンハーゲン、チューリッヒ、東京となっている。逆に物価の安いベスト5は順に、クワラルンプール(マレーシア)、ムンバイ(元ボンベイ、インド)、ブエノス・アイレス、ニューデリー、マニラ(フィリピン)だった。
調査では実働時間にも触れている。有給休暇ではブラジルの二都市が三十日で、世界平均の二十日を上回って最高となっている。シンガポールは十二日、北京ではわずか九日間でアジア諸国が平均で少なく、ヨーロッパ諸国より五十日以上実働時間が長い。時間的には世界平均が年間一八〇〇時間に対し、ソウルは最高の二三〇〇時間、次いで香港、ムンバイの二二〇〇時間となっている。サンパウロ市は一七三六時間、リオは一七〇九時間で、最低はパリ(フランス)の一四〇〇時間だった。
また消費力ではサンパウロ市が四二位、リオが五二位となっている。世界共通のマクドナルド・ハンバーガーのビッグマックを買うのに世界平均は三十五分の労働を要する。サンパウロ市は三十八分、リオは約一時間となっている。ナイロビ(ケニア)は一時間半、アメリカでは十三分となっている。一キロのパンの場合はサンパウロ市が三十分、リオは四十分。トロントで十分、フランクフルトで九分、ダブリンで七分の労働を必要とする。一キロの米ではサンパウロ市がロンドンやチューリッヒの倍、リオはヨーロッパ諸国の四倍の汗を流さなければ購入できない。