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PCC=テレビ局職員を誘拐=見返りに声明の全国放映=要求通り人質は無事解放

ニッケイ新聞 2006年8月15日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十三日、十四日】犯罪組織州都第一コマンド(PCC)がテレビ局グローボの職員二人を誘拐し、人命の見返りに組織のメッセージを収録したDVDの全国向け放映を強要するという事件がサンパウロ市で発生した。
 誘拐されたうちの一人はDVDを持たされて事件当日に解放された。もう一人は犯人らの要求通りに放映された二十四時間後に解放された。二人とも暴行も受けずにケガもなく無事だった。
 グローボでは放映は独断で決定したとして、放映の是非や批判は後回しにして人命を第一に尊重したとの声明を発表した。保安当局は、テレビを通じての声明発表や要求は古くはコロンビアの麻薬組織、最近は国際テロ集団アルカイダの常とう手段であり、PCCもこれを真似たもので今後もこの手口は今後も増えるとみて警戒を強めている。
 誘拐事件は十二日午前八時ごろ、同市ブルックリン区にあるサンパウロ市グローボ本社の近くのパン屋で発生した。このパン屋は同局の職員がコーヒーや朝食をとる溜まり場になっている。
 誘拐された取材レポーターと撮影助手も毎日いつも通りコーヒーを飲んで仕事に出かけようとしたところを二人組に拉致された。犯人らは二人にピストルを突きつけ、落着いた物腰で居合わせた人らに「静かにしろ、さもなくば危害を加える」と威かくし、車で立ち去った。仲間と思われるオートバイの二人組も車の後を追った。
 撮影助手は同日午後十時半ごろ、グローボ本社の前で解放された。犯人らはDVDを手渡し、放映しなければレポーターを殺害すると強要した。
 これを受けて同局は十三日午前〇時二十八分、臨時ニュースとしてDVDを全国向けに放映した。DVDには忍者風の覆面をした若者がアルカイダのテレビ声明と同様、声明文を読み上げた。
 内容は刑務所内での待遇改善、差別、暴力の廃止を訴えたもの。最後には襲撃事件に触れ、我々の戦いは州政府と警察を敵としているもので、組織の家族や親族には手を出すなとした上で、その見返りに我々は市民には危害を加えないと結んだ。メッセージは三分三十六秒に及んだ。テレビ局によると武器類も画像に入っていたが、これはカットしたという。