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半導体生産に税制恩典=ミナス州知事先手=思惑は工業団地設置=マナウスと誘致合戦へ

ニッケイ新聞 2006年8月16日付け

 【エスタード・デ・サンパウロ紙十五日】連邦政府は十四日、半導体生産へ税制恩典を二〇〇六年中に付与する意向であることを明らかにした。ミナス・ジェライス州にマイクロ・エレトロニクス工業団地の設置を目論見、税制特典に強い関心を持つネーヴェス同州知事(ブラジル民主社会党=PSDB)が税制恩典の発表を行い、半導体計画に番狂わせが生じた。ミナス州知事はマンテガ財務相に会い、政府が税制恩典で半導体生産を支援する暫定令を発令することを確かめた。暫定令の要旨は、(一)原料の輸入税免除、(二)PIS(工業税)とCofins(社会保険納付金)の部分または全額免税,(三)Cide(行政指導負担金)の免除など。
 ブラジルで最初の半導体工業団地をミナス州に設置することで、ネーヴェス知事は社会経済開発銀行(BNDES)の協力も取り付け、先鞭をつけた。税制恩典と最先端技術を導入することで、ミナス州が全国の半導体メーカーを誘致し、中心的存在となるらしい。
 同知事はブラジリアへ駆けつけ、産業界が最も食指を動かす半導体生産で税制恩典の暫定令を準備中であると発表し、政治的先手を打った。半導体生産への進出に賭ける企業の投資が、いっせいにミナス州へ向けられると予想される。
 ルーラ大統領の意向をいち早くキャッチしたネーヴェス知事の抜け駆けで、財務相も泡を食ったようだ。政府の方針は、大統領の意向通りであると財務相が言質を与えた。政府は暫定令を近日中にも公式に発表し、官報で公示する予定という。
 日本方式のテレビ地上デジタル放送の導入により、産業界に新しいビジネスチャンスが到来した。暫定令はデジタル時代の開幕と共に、多数の派生産業の誕生を期待している。半導体を免税にしても、税収は激増する。政府は超零細企業への税制恩典を付与するので、五〇億レアルも税の減収が予想される。そのため代替財源を開拓する。
 泰平の眠りから覚めさせられたのは、マナウス経済特区だ。いまやデジタルテレビの御鉢一〇〇〇億レアルを、ミナス州へ奪われようとしている。これまでエレトロニクス工業団地は、マナウスのオハコと思っていたが、ミナス州にデジタルテレビ各種機器の生産拠点が生まれようとしているのだ。
 マナウス特区は現在、ブラジルで使用するIT(情報技術)部品を一手に製造している。それがコスタ通信相の音頭で、新たにミナス州に生産拠点が設立されることに危機感を抱いた。同相はアナログとデジタル併用受像機の生産をマナウスに任せる理由はないと発言。
 同併用受像機(セット・トップ)生産は、三年間に九〇億レアルの売上げになる。IT機器ではマナウスに恩典を付与したが、デジタルテレビはIT法の適用範囲に入らないというのが通信相の見解だ。携帯電話でも同じ論争があった。ブラジルは、携帯電話をIT機器とみなす世界で唯一の国となった。
 デジタルテレビで需要が激増するのは、チューナー(コード変換機)。国内だけでなく、ラテン・アメリカ全域に供給しなければならないからだ。チューナーだけでも、マナウスとミナスで激戦が交わされる。マナウス産業界は、テレビの画面がコンピューターのモニターに使われる時代だから、テレビはIT製品だと主張する。