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天然資源多くして政治腐る=惰眠貪り投資せず=発展は教育と技術開発から=行政管理コストの削減を

ニッケイ新聞 2006年8月16日付け

 【ヴェージャ誌一九六七号】マサチューセッツ工科大学で教鞭を執るエリアナ・カルドーゾ教授(経済学)は、天然資源が豊かな国は汚職がまん延し、政治が不安定であると定義した。豊かな資源で得た財源を教育や技術開発に利用せず、国家の隆盛につながるような研究機関を設立しようなどと考えないのが特徴だという。資源が有り余るほどある国は、私腹を肥やすことしか考えない時代遅れの政権が誕生する。天然資源がなくても教育や技術開発を優先し、知的資産を蓄積した国だけが、経済発展し、民主政治を完成させているという。
 以下は同教授との一問一答である。
 【無資源国が有資源国の三倍も成長したのは、何故か】理由は色々ある。最も重要なのは、専門教育や研究機関の設立が国家を窮地から救う唯一の突破口だとして、力を集中したこと。天然資源の豊かな国は惰眠を貪り、未来へ向けた投資をしなかった。そして政府は汚職と貪りの巣窟となり、豊かな資源が国民を散漫にし、発展の妨げとなった。
 【原油が不安定な政治を招き、経済発展を遅らせる理由か】第一に、原油やコモディテイの国際相場は変動が激しく、予測不可能であった。そのため資源国の経済は相場に振り回され、経済変動が慢性病となり、投資も危険視されて下火となった。
 第二、国家経済を支える財源が不安定なため、為替政策の設定は困難視された。そのため原油やコモディテイ価格の暴騰時は、外貨の洪水で自国通貨も暴騰したため、特産資源以外の産業は育たなかった。原油や地下資源、農産物も同じ道をたどる。国家経済は計画が立たず、経済成長は停滞し、発展しなかった。
 【その対策法は】自国通貨の暴騰と不安定な為替率を緩和するため、外貨による相場の安定基金を設立すること。ドル安とレアル高となったら基金にドル通貨を溜め込み、為替相場に変動を来たさない。貯まったドルは流通させない。
 レアル安になったら、放出して均衡をとる。そのために基金ともたれ合う産業構造が必要である。よい例は、チリが銅輸出に設けた為替基金である。産業構造が未熟な国は、基金を作っても無駄である。
 輸出で儲けた資金は、汚職政治家の懐に転がり込むのが関の山。ベネズエラにも為替基金はある。それでどうなっている? ハイエナ政治家が群がって横流しだ。
 【ブラジルは条件に恵まれているのに、政治の舵取りが下手なのか】ブラジルと産油国を同列に比較するのは無理がある。ブラジルは、一品輸出に頼っていない。しかし、ブラジル政府は税収と輸出利益の予算管理を行う機関が設置できないのか、知恵が及ばないのかどっちかだ。
 国庫に入った輸出収益や税収の使途が拙劣なら、ドブに金を投じるも同然だ。ブラジルには中央銀行や大学の研究機関があって、通貨政策と通貨管理を行っている。それだけでは、ブラジルの経済成長を盛り上げるに不十分である。
 【何が、ブラジルに不足するのか】企業や国民のための日常的な行政管理が不足している。ブラジルの経営コストは、省庁の汚職やズサン管理が支障となっている。ブラジルの経営環境には、犯罪と不正行為が深く根を張っている。政治家の不罰特権は、ブラジル社会に疑心暗鬼を引き起こし、信用経済が育ち難い。これらが経営コスト引き上げと非能率化で経済成長を妨げ、産業や経済発展の癌となっている。
 【メルコスルとベネズエラ】労働者党(PT)政権の誕生以前からメルコスルは、死霊の集まりであった。アルゼンチンだけでも迷惑なのに、チャベス大統領が入ってきた。もはやメルコスルはブラジルにとって厄介者に過ぎない。べネズエラの加盟でメルコスルは時代錯誤と大衆迎合の旗を掲げるペテン師たちの舞台になろうとしている。ブラジルにとってメルコスルの使い道があるなら、通商交渉の踏み台にすること。国際通商では規模の拡大に使える。技術革新には世界を飛び回る翼として使える。