ニッケイ新聞 2006年8月16日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十八日】サムエル・P・ギマランエス外務次官は、ドーハ・ラウンド締結が決まる場合の心構えを述べた。同協定の締結後は、政府が国内企業の面倒を見られないことや、国内の産業行政で指導できないことなどを伝えた。
同協定では、補助金の供与停止や環境保護の推進、労働法の改正が謳われている。ブラジルは軍政時代まで、特別分野に対し税制恩典や政府の資本参加による保護貿易を行っていた。こうしてブラジルに生まれたのが、製鉄や化学、IT、造船、紙パルプ、自動車などの分野である。
健全な国際競争のため保護貿易を阻止する国際法が設置され、数々の罰則が設けられる。国内産業の勃興主義者はこれまで、この風潮に逆らってきた。この辺の事情はブラジルばかりでなく外国も同じだ。労働者党(PT)の政治家にこのタイプが多い。
これらの政治家は、ヴァリグ航空救済や焦げ付いた投資ファンドに公的資金を投ぜよという。中央銀行がドルを購入し、レアル通貨下落のため為替政策の変更を叫ぶ。基幹産業に恩典を与え、関税障壁を設けて国際競争から守れと訴える。先進国にも同じタイプの政治家はいる。
国内産業には補助金で保護するよう求める政治家が、米国のアルコール補助金やEUの砂糖大根補助金、カナダの航空機補助金には抗議する。民族主義者が政府を支持するのは、ドーハ・ラウンド(新多角的貿易交渉)で外国の生産者や企業に補助金廃止を強制する時だけである。
これまでは自分にだけ都合のよいことを夢見ていたが、世界貿易機関(WTO)で最終決着がつくと世界が同じ土俵で勝負をすることになる。競争相手は農業生産者をモヤシにした先進国だけではない。輸出最優先で法整備とインフラ整備に賭けた中国やアフリカなどの人件費激安国もある。しかも時代の潮流だ。