ニッケイ新聞 2006年8月17日付け
【エスタード・デ・サンパウロ紙十六日】地下鉄労組は十五日、四号線の民営化に抗議するストを二十四時間にわたって決行し、二八〇万人のサンパウロ市通勤者の足を奪った。混乱状況は、州都第一コマンド(PCC)の襲撃に次ぐ規模とされる。地下鉄労組のゴドイ理事長は、違法ストの謗りは免れないが、公共サービスの健全化を求める政治的動機によると釈明した。レンボサンパウロ州知事は、ストを無責任で違法の野蛮行為と位置付け、社会秩序を乱すことで労組はPCCに次ぐ恐怖の存在であると訴えた。四号線は二年後にしか開通しないので、ストの理由にはならない。ストは、選挙に向けたサボタージュだと糾弾した。
地下鉄労組は十日、地下鉄職員七五〇〇人の二一%に当たる一六〇〇人を召集し、地下鉄四号線が官民合資法(PPP)適用に基づき民営化されることへ抗議するストの決議を採択した。スト決行の労働法の根拠について、労組は一切触れなかった。しかし、関係者は損害額が七〇〇〇万レアルに達するとみている。
足を奪われた通勤者二八〇万人がバスや自家用車に切替えたことによる交通渋滞は、午前九時時点で一八八キロメートルに及んだ。一〇六キロメートルを超過すると、経済活動に支障が起きる。PCC襲撃時が一九五キロメートルで、これに次ぐ渋滞記録であった。
労組もストの動機不足を認めた。スト決行の日が選挙のテレビ放送開始日と重なったことで、政治的理由とはいえ、誤解されるリスクはあると労組理事長はいう。今回のストは、通勤者のラッシュ・アワーを避けるよう通告した地方労働裁判所の仮判決を無視したものだ。ストは、労裁により違法行為と罰金の判決を受ける模様である。
官民合資法(PPP)により地下鉄の建設出資に参加した民間コンソーシアムは完成後、地下鉄の経営権を付与されることになっている。地下鉄労組は三月、地下鉄民営化に異議を唱えたが敗訴となった。地下鉄四号線はメトロクアトロ・グループに経営権を付与することが決定された。
地下鉄労組は統一中央労組(CUT)の傘下にあるが、皮肉にも労働者党(PT)政権が二〇〇四年十二月に制定したPPPにより、同労組の抗弁は却下された。市民の代表という労組の主張が、PPPの入札では通用しない。
地下鉄四号線に就労する職員は、公務員扱いの従来地下鉄職員とは別扱いで、民間企業の職員となる。しかしサラリーは、従来組よりも高額優遇の見込みだ。バスや郊外電車を乗りつぐ地下鉄の通勤者の二〇%が十五日に欠勤または遅刻した。地下鉄ストは波及的損害をもたらすので、民営化は新しい政治的措置となる可能性がある。
レンボ知事は、労組をPCC並みの野蛮人グループと呼んだ。政治的理由というが、常識が皆無である。ブラジルは民主主義の国だから労組のゴロツキも人間扱いするが、市民は怒り心頭に発していると述べた。
地下鉄職員にとってストは二十四時間であるが、病院などは二十四時間ストのために多くの生命が他界する。またサンパウロ市を横断する交通手段がないため、人生を狂わされた人たちも多い。